女性のキャリアと結婚。就業継続7割の時代に、変わったことと残る課題
女性のキャリアと結婚をめぐる状況は、この10年で数字の上では大きく動きました。ただし変わった部分と変わっていない部分がはっきり分かれています。この記事では、公的統計で確認できる事実を並べ、どこが動き、どこが残っているのかを整理します。
就業継続率は上がった
内閣府の男女共同参画白書によれば、第1子出産前に就業していた女性の就業継続率は69.5%(2015〜2019年に第1子を出産した層)まで上昇しています。
この数字は長く4割前後で推移し、2010年代半ばの調査で約5割、さらに直近では約7割へと動きました。「出産=退職」という前提は、統計上はすでに崩れています。
背景として、育児休業制度を利用して就業を継続する層が増えたことが指摘されています。制度が使えるかどうかが、継続の可否を分けた形です。
ただし、雇用形態で差がある
同じ白書では、継続率が雇用形態で大きく異なることも示されてきました。正規雇用では継続率が高い一方、パート・派遣では育児休業制度の利用率が低く、出産後に労働市場から離れる人が大半という状況が報告されています。
つまり「女性のキャリアと結婚」という括りでは実態を捉えきれません。正規雇用で制度を使える人と、そうでない人の間に大きな差があり、平均値はその中間を示しているだけです。
一度離職した場合も、数年程度で再び仕事に就く人が増えているとされます。ただし、離職前と同じ条件で戻れるとは限りません。
理想とするライフコースが変わった
国立社会保障・人口問題研究所の第16回出生動向基本調査(2021年実施)では、注目すべき変化が報告されています。
「女性のライフコース」の理想像として、男女ともに「仕事と子育ての両立」が初めて最多になりました。これは女性本人だけでなく、男性が女性に期待するライフコースについても同様です。
同調査では、男性が結婚相手に女性の経済力を重視または考慮する割合が48.2%(前回41.9%)に上昇しています。「男性が稼ぎ、女性が家庭を守る」という組み合わせは、期待の面でも少数派になりつつあります。
残っている不均衡
一方で、動いていない領域があります。時間の配分です。
白書では、共働き世帯であっても家事・育児といった無償労働の負担が女性に偏っていることが繰り返し指摘されています。就業を継続していても、1日の時間の使い方には差が残るという構図です。
この不均衡は、キャリアの選択に直接影響します。昇進、転勤、長時間の業務を伴う役割を引き受けられるかどうかが、時間の余裕によって決まるためです。制度上の機会が同じでも、実際に選べる範囲が違ってきます。
個人と企業、それぞれの論点
個人の側では、「いつ何を選ぶか」より「選択肢を残せるか」が実務的な論点になります。専門性、社外で通用する実績、いつでも再開できる関係。これらは離職の有無にかかわらず価値を持ちます。
企業の側では、制度の有無より運用が問われます。制度があっても使った人の評価が下がる環境では、制度は機能しません。継続率が7割に達したいま、次の論点は「継続した人が同じ機会を得られるか」に移っています。
統計は平均を示しますが、個々の判断はそれぞれの条件で決まります。数字は前提の確認に使うものであり、答えではありません。
ライフステージごとに変わる論点
同じ人でも、時期によって優先することは変わります。
- 入職から数年/専門性の土台を作る時期。移動しやすく、試しやすい
- 責任が増える時期/育児と重なりやすい。裁量のある働き方が効いてくる
- 手が離れる時期/時間の制約が緩む。ここから伸びる人は多い
- その後/65歳時点でも平均余命は20年以上。長い後半戦がある
一時的に負荷を落とす期間があっても、全体で見れば取り返せます。短期の停滞を、キャリア全体の停滞と混同しないことが大切です。
企業ができる実務的な工夫
制度そのものより、運用の設計で差がつきます。
復帰後の役割を事前に決めておく。戻ってから決めると、無難な配置に落ち着きがちです。
評価の期間を年単位で見る。短期の稼働時間で測ると、制約のある人が構造的に不利になります。
情報の非対称をなくす。時短勤務やリモートの人が、意思決定の場から外れないようにする。会議の記録を残すだけでも効果があります。
男性の取得を前提にする。育児休業が女性だけの制度である限り、採用や配置の判断に偏りが残ります。
本文中の数値は各調査時点のものです。調査主体により定義や推計方法が異なるため、出典を確認のうえご参照ください。
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