キャリア

起業家の仕事と家庭。裁量はあるのに、両立が難しくなる理由

イーランサー・ジャパン株式会社

起業すれば時間の使い方は自由になるはずです。しかし実際には、会社員のときより家庭との両立が難しくなったという声が少なくありません。この記事では、裁量があるのに難しくなる構造と、その前提で何を決めておくべきかを整理します。

裁量があるのに難しくなる

起業家は、勤務時間も場所も自分で決められます。それでも両立が難しくなるのには、3つの構造的な理由があります。

裁量とは「決めていい」という意味であって、「余裕がある」という意味ではありません。この取り違えが、独立後の摩擦の多くを生みます。

収入の変動が家庭に及ぼす影響

会社員との最大の違いは、収入が変動することです。

総務省の調査では本業がフリーランスの人は209万人、自営業主は511万人とされます。珍しい働き方ではありませんが、毎月同じ額が入る前提が消える点は共通します。

この変動は、本人よりも同居する家族に効きます。住宅ローンの審査、保育料の算定、教育費の見通し。制度の多くは安定収入を前提に設計されており、その外側に出ると手続きが増えます。

また、社会保険の負担も変わります。会社員であれば事業主が半分負担していた保険料が、全額自己負担になります。

配偶者との合意が事業計画より重要になる

起業の準備で見落とされやすいのが、家庭内の合意形成です。

確認しておくべきことは具体的です。いつまで赤字を許容するか。生活費をどこから出すか。どこまで貯蓄を取り崩すか。どうなったら撤退するか。

これらを事前に数字で決めていないと、事業の判断と家庭の不安が混ざります。撤退すべき局面で「もう少し」と続けてしまう理由の多くは、事業の見通しではなく、引き返せないという感情です。

共同創業者がいる場合は、相手側の家庭事情も事業リスクの一部になります。踏み込みにくい話題ですが、後から表面化するほうが影響は大きくなります。

制度上の差を知っておく

会社員と比べて、制度上不利になる点があります。

これらは「起業しないほうがよい理由」ではなく、代替手段を用意すべき項目です。民間保険、小規模企業共済、iDeCoなど、置き換えられる制度は存在します。知らずに空白のままにすることが問題になります。

始める前に決めておくこと

3つだけ挙げます。

働かない時間を先に決める。終わりが定義されていない以上、あらかじめ空けておかないと埋まります。事後に確保するのは不可能です。

自分が倒れたときの手順を書いておく。代わりがいない状態は事業のリスクでもあります。取引先への連絡、支払い、権限。1枚あるだけで違います。

家庭側の撤退ラインを数字で持つ。事業の撤退ラインとは別に、生活として耐えられる限界を決めておきます。この2つは一致しません。

フェーズごとに変わる負荷

起業家の生活は、事業の段階によって大きく変わります。

最も厳しいのは2つ目の時期とされます。ここを一時的な期間として家族と共有できているかどうかで、耐えられる度合いが変わります。

家庭を含めて設計する

両立の工夫は、精神論ではなく仕組みで作れます。

予定を先に埋める。家族との時間を後から確保するのは不可能なので、先に入れて動かさない枠にします。

週に1回、状況を共有する。数字を含めて話すと、不安が推測ではなく事実に基づくものになります。

相談相手を家庭の外に持つ。経営の悩みをすべて家庭に持ち込むと、家庭が休む場所でなくなります。

成果を一緒に確認する。うまくいっている部分を共有しないと、家族から見て負担だけが見えます。

参考文献
  1. 内閣府「令和5年版 男女共同参画白書」
  2. 総務省「令和4年就業構造基本調査」

本文中の数値は各調査時点のものです。調査主体により定義や推計方法が異なるため、出典を確認のうえご参照ください。

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