世代と地域で変わる、仕事と結婚に求めるもの。価値観の分布を読む
同じ会社の中でも、仕事や結婚に何を求めるかは人によって大きく違います。その違いは個人の性格だけでなく、育った時期の経済環境や、住んでいる地域の条件からも生まれます。この記事では、公的統計から読み取れる分布を整理します。
世代差は、育った経済環境から生まれる
内閣府の男女共同参画白書は、世代によって育ってきた社会・経済情勢が大きく異なり、働き方や意識もその影響を受けているという視点で分析を行っています。実質GDP成長率、金利、完全失業率といった指標を世代ごとに並べる構成です。
白書では男女雇用機会均等法が施行された1986年を起点に、前後の世代を比較しています。就職した時期に何が当たり前だったかが、その後の前提を形づくるという見方です。
この視点は実務でも有効です。「最近の若手は」という語り方は、世代の性格ではなく、その世代が経験した経済環境の違いを見落としています。成長を前提にできた時期と、そうでない時期では、安定の意味が変わります。
結婚に求めるものは、この10年で動いた
出生動向基本調査(2021年実施)で確認できる変化は明確です。
- 「いずれ結婚するつもり」の未婚者は男性81.4%・女性84.3%へ、いずれも前回から減少
- 女性が男性に家事・育児の能力や姿勢を求める割合は70.2%(前回57.7%)
- 男性が女性の経済力を重視・考慮する割合は48.2%(前回41.9%)
- 理想のライフコースは、男女とも「仕事と子育ての両立」が初めて最多
方向としては、役割の固定が外れ、条件が双方向になっています。ただしこれは全体の平均であり、年齢層によって差があることも同調査は示しています。
地域による条件の差
地域差については、慎重に扱う必要があります。
出生動向基本調査は地域ブロック別の集計を公表しており、居住地の人口集中の度合いによる違いも分析対象にしています。総務省の就業構造基本調査でも、都道府県別の就業状態が把握できます。
ただし、そこで見えるのは「価値観の違い」というより「条件の違い」である場合が多いと考えられます。通勤時間、保育の空き、親族の近さ、選べる職種の幅。同じ希望を持っていても、実現できるかどうかが地域で変わります。
リモートワークの定着は、この条件差の一部を埋めました。ただし職種によって効果は大きく異なり、対面が前提の仕事では変化はありません。
採用や制度設計で誤りやすい点
分布を平均で語ると、施策を外します。よくある誤りが3つあります。
世代でひと括りにする。同じ世代の中の分散は、世代間の差より大きいことがあります。
本社の条件を全社の前提にする。都市部で成立する制度が、地方拠点では機能しないことがあります。通勤、保育、住居の条件が違うためです。
希望と実現可能性を混同する。「取りたい」と「取れる」は別です。男性の育児休業で、希望と実際の取得期間が離れているのはその例です。
分布として捉える
統計から言えるのは、平均が動いたことと、分散が大きいことの2点です。
実務では、平均に合わせた制度をひとつ作るより、選べる幅を用意するほうが機能します。勤務地、時間、休みの取り方。選択肢があれば、条件の異なる人が同じ制度の中に収まります。
そして個人にとっては、自分がどの分布のどこにいるかを知ることが判断の助けになります。多数派である必要はありませんが、自分の希望が全体の中でどう位置づくかを知っておくと、条件交渉がしやすくなります。
採用の場面でどう聞くか
価値観の違いは、属性ではなく本人に聞くのが確実です。聞き方には工夫があります。
「どんな働き方をしたいか」より「これまでで一番良かった時期はいつか」のほうが具体的な答えが返ります。理想は語りにくくても、経験は語れます。
条件の優先順位を並べてもらう。年収、時間、裁量、成長、人間関係。順位が分かれば、提示できる条件と合うかを判断できます。
制約を先に聞く。介護、育児、通勤。後から判明するより、最初に共有できるほうが双方にとって安全です。
選べる幅を用意するという設計
分布が広い集団に対しては、一律の制度より選択肢のほうが機能します。
- 勤務地/出社、在宅、拠点の選択。職種によって適用範囲を決める
- 時間/時差出勤、短時間勤務、繁閑に応じた調整
- 役割/管理職以外の専門職の道を用意する
- 評価の期間/短期と長期の両方で見る
選択肢を用意することは、全員に合わせることではありません。条件の異なる人が同じ組織に留まれるようにする設計です。結果として、採用できる範囲も広がります。
本文中の数値は各調査時点のものです。調査主体により定義や推計方法が異なるため、出典を確認のうえご参照ください。
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