技術トレンド

サプライチェーンとITの関係。情報の流れをどう整えるか

イーランサー・ジャパン株式会社

サプライチェーンの課題は、モノの流れと情報の流れがずれることから生じます。この記事では、ITが何を担い、何が障害になるのかを整理します。

サプライチェーンとは

サプライチェーンとは、原材料の調達から、生産、輸送、販売までの一連の流れです。

1社で完結することはほとんどなく、多数の企業がつながって成立しています。

ITが関わるのは、この流れの「情報」の部分です。何がどこにいくつあるか、いつ届くか、どこで滞留しているか。

モノの流れと情報の流れがずれると、問題が生じます。在庫が足りないのに気づかない、余っているのに追加発注する、届く時期が分からず生産計画が立たない。

この情報の精度を上げることが、この領域のIT の役割になります。

何が課題になっているか

近年、この領域の重要度が上がった理由を整理します。

供給の途絶を経験した。災害、感染症、地政学的な要因。調達先が1社に集中していることの危険性が認識されました。

需要の変動が大きくなった。予測が難しく、在庫の判断が困難になっています。

物流の制約。国土交通省の試算では、対策を講じない場合、2024年度に約14%、2030年度に約34%の輸送力不足が生じる可能性が示されています。運べる量そのものに限界が生じます。

取引先の状況が見えない。二次、三次の調達先で何が起きているかを把握できていない企業が多くあります。

使われる技術

この領域で実際に使われる仕組みを整理します。

最後の項目が最も難しく、最も効果が大きい領域です。1社の中で最適化しても、全体の効率は上がりません。

ただし、企業間でデータを共有するには、標準化と信頼関係が前提になります。技術より、商慣行の問題です。

標準化という論点

この領域では、技術の前に決めるべきことがあります。

データの形式が企業ごとに違うと、連携できません。品番の付け方、単位、日付の形式。

業界ごとに標準を定める動きがあります。共通の形式を使えば、個別の変換が不要になります。

物流の分野では、パレットの規格統一なども進められています。物理的な標準化とデータの標準化は、両輪の関係にあります。

この作業は地味で、単独の企業には利益が見えにくいものです。だからこそ業界団体や政策が関与します。

参加していない企業は、いずれ取引の条件で不利になる可能性があります。

取り組みの進め方

個別企業として何ができるかを整理します。

第一に、自社の中を可視化する。在庫、リードタイム、欠品の頻度。ここが把握できていない企業が少なくありません。

第二に、調達先の状況を知る。依存度の高い取引先、代替の可否。

第三に、主要な取引先と情報を共有する。すべてでなくてよく、影響の大きい相手から始めます。

第四に、標準に合わせる。業界で決まった形式があれば、それに寄せます。

いずれも、単独では完結しません。相手のある取り組みである点が、この領域の特徴です。

IT人材から見た領域

この分野で働くことについて整理します。

必要なのは、業務の理解です。調達、生産計画、在庫管理、物流。技術だけでは要件が定義できません。

扱うデータの規模が大きく、基盤の設計力も問われます。

関係者が多いため、調整の比重が高くなります。技術の実装より、合意形成に時間がかかる場面があります。

一方、成果が明確に出る領域でもあります。在庫の削減、輸送費の低減、欠品の減少。数字で示せる成果は、評価につながります。

製造業や小売業の業務知識を持つ人にとって、参入しやすい領域だと考えます。

供給途絶への備え

近年、この観点の重要度が上がりました。

調達先の集中が危険性を生みます。1社に依存していれば、その1社が止まれば生産も止まります。

把握すべきは、二次、三次の調達先です。直接の取引先が複数あっても、その先が同じ1社なら分散になっていません。

この可視化が難しいのが実情です。取引先が情報を開示しない場合もあります。

対策は3つあります。調達先を分散する、在庫を持つ、代替品を確保する。いずれも費用を伴い、効率とは相反します。

どこまで備えるかは、経営判断になります。技術は可視化を支援できますが、判断そのものは行えません。

在庫という論点

サプライチェーンの中心的な判断が、在庫の量です。

少なすぎれば欠品し、多すぎれば費用がかかります。保管費、資金の固定、陳腐化の危険。

従来は、在庫を減らすことが正しいとされてきました。必要なときに必要な分だけ調達する考え方です。

近年は、この前提が見直されています。供給が途絶する事態を経験し、一定の在庫を持つ判断が増えました。

データで判断できる部分もあります。需要の変動幅、調達のリードタイム、欠品時の損失。これらから適正な水準を算出できます。

ただし、想定外の事態には計算が効きません。数字と判断の組み合わせが必要な領域です。

参考文献
  1. 国土交通省「物流の2024年問題」関連資料

本文中の数値は各調査時点のものです。調査主体により定義や推計方法が異なるため、出典を確認のうえご参照ください。

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