IoTの実装とは。4つの層・難しさ・導入の進め方
IoTは実証で終わり、本格導入に至らない例が多い領域です。この記事では、何が難しく、どう進めれば成果につながるのかを整理します。
IoTとは何か
IoTは、機器をネットワークにつなぎ、状態を取得したり操作したりする仕組みです。
対象は幅広く、工場の設備、建物の空調、車両、農業機械、店舗の冷蔵庫、家電まで含まれます。
目的は、これまで見えなかった状態を可視化することです。稼働しているか、異常はないか、どう使われているか。
従来は人が見に行っていた情報が、自動で集まるようになります。これにより、故障の予兆を捉える、無駄を減らす、遠隔で対処するといった対応が可能になります。
構成する4つの層
IoTの仕組みは、層で理解すると整理しやすくなります。
- ①センサー・機器/温度、振動、位置、電力などを測る。あるいは操作を受ける
- ②通信/データを送る経路。有線、無線、携帯回線、専用の低消費電力通信
- ③収集・蓄積/届いたデータを受け取り、保管する基盤
- ④活用/可視化、異常検知、予測、自動制御
プロジェクトが頓挫する原因の多くは、③と④の設計不足にあります。機器をつないでデータを集めたものの、それをどう使うか決まっていない状態です。
先に④を決めてから、必要な①②③を選ぶのが正しい順序になります。
難しさはどこにあるか
IoTの実装には、Web開発とは異なる制約があります。
現場の環境。工場、屋外、車両。温度、振動、粉塵。機器が動作する条件が厳しくなります。
電源と通信。電源が取れない場所、電波が届かない場所。電池で数年動かす必要がある場合もあります。
更新ができない。設置後に手が届かない機器では、ソフトウェアの更新が困難です。最初から遠隔更新の仕組みを組み込む必要があります。
数が多い。数千、数万の機器を管理する場面では、1台ずつ設定する方式は成立しません。
止められない。稼働中の設備に組み込む場合、停止できる時間が限られます。
安全性の課題
IoT機器は、攻撃の対象になりやすい性質を持ちます。
初期のパスワードのまま設置される。大量に設置するため、設定が省略されがちです。
更新されない。脆弱性が見つかっても、修正が適用されない機器が残ります。
物理的に触れられる。屋外や公共の場所に設置された機器は、直接操作される危険があります。
侵入経路になる。機器そのものの被害だけでなく、そこから社内ネットワークへ侵入される可能性があります。
設計段階で、更新の仕組みと通信の暗号化、認証を組み込むことが必要です。後から追加するのは困難です。
活用の型
実際に成果が出ている用途を整理します。
予兆保全。設備の振動や温度を監視し、故障する前に対処します。停止による損失が大きい設備ほど効果が出ます。
稼働の可視化。設備がどれだけ動いているか。稼働率の改善につながります。
遠隔監視。離れた場所の状態を確認します。巡回の削減、人手不足への対応。
使用量の把握。電力、水、材料。無駄の発見と削減。
いずれも、費用対効果が計算しやすい用途です。逆に、「とりあえずデータを集める」構想は成果につながりにくくなります。
始め方
導入を検討する場合の順序を示します。
第一に、解きたい課題を1つ決める。「故障で止まる時間を減らしたい」など、具体的にします。
第二に、必要なデータを特定する。その課題を解くために、何を測ればよいか。
第三に、小規模に試す。設備1台、拠点1か所から始めます。現場の条件は、やってみないと分からない部分が多くあります。
第四に、効果を測る。導入前後で何が変わったかを数字で確認します。
第五に、展開する。効果が確認できてから、規模を広げます。
最初から全社展開を計画すると、現場の条件の違いで頓挫します。
この領域で働くには
IoTに関わる人材について整理します。
必要な知識が広いのが特徴です。組込みソフトウェア、通信、クラウド、データ処理。1人ですべてを担うことは稀で、複数の専門が組み合わさります。
組込み側から入る場合、C言語とハードウェアの知識が土台になります。
クラウド側から入る場合、データの収集と処理の基盤を担います。
いずれの場合も、現場の業務理解が求められます。製造、物流、農業。その領域を知らなければ、何を測ればよいか判断できません。
製造業に厚みのある日本では、この領域の需要が続くと考えられます。
集めたデータの扱い
IoTでは、データ量が想定を超えやすくなります。
1秒ごとに値を送る機器が1000台あれば、1日で8600万件になります。すべてを永久に保管すると、費用が急増します。
対策として、段階を分けた保管が行われます。直近は細かく、古いものは要約して残す。1分ごとの値を1時間ごとの平均に集約する、といった方法です。
また、機器側で処理する方式もあります。異常があったときだけ送る、一定の変化があったときだけ送る。通信量と費用の両方を抑えられます。
この設計は、後から変えるのが困難です。捨ててしまったデータは戻りません。何を残すかを、開始時に決めておく必要があります。
費用の構造
IoT導入の費用は、複数の要素で構成されます。
機器の費用。センサー本体と設置作業。設置費用が機器代を上回ることもあります。とくに稼働中の設備に取り付ける場合です。
通信費。台数に比例します。少量のデータを送る用途向けの、安価な通信方式もあります。
基盤の費用。データを受け取り、保管し、処理する仕組み。
保守費用。機器の故障、電池の交換、ソフトウェアの更新。台数が多いほど、この負担が効いてきます。
試算では、初期費用より運用費用の累計が大きくなることが一般的です。5年程度で比較する必要があります。
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