技術トレンド

製造業のDXとは。6つの領域と、現場で進まない理由

イーランサー・ジャパン株式会社

製造業のDXは範囲が広く、話が噛み合わないことがあります。この記事では、領域を分類したうえで、現場で何が障害になっているのかを整理します。

製造業のDXとは何を指すか

この言葉は範囲が広く、話が噛み合わないことがあります。まず分類します。

下に行くほど難易度が上がります。最後の項目は、組織や収益構造の変更を伴います。

多くの企業が最初の2つから始めます。効果が測りやすく、投資の判断がしやすいためです。

なぜ日本の製造業で進みにくいのか

課題は技術ではなく、現場の条件にあります。

設備が古い。数十年稼働している機械にはデータを出す仕組みがなく、後付けが必要になります。

止められない。稼働中の産線に手を加える機会が限られます。

現場の最適化が進んでいる。長年の改善で高い水準に達しており、デジタル化の効果が相対的に小さく見えることがあります。

属人化した熟練。言語化されていない判断が、品質を支えている場合があります。これをデータに置き換えるのは容易ではありません。

人材。製造とITの両方を理解する人が不足しています。

何から始めるか

実務的な順序を示します。

第一に、1つの課題を選ぶ。「工場をスマート化する」ではなく「この設備の停止時間を減らす」まで具体化します。

第二に、既にあるデータを見る。新しくセンサーを付ける前に、既存の記録を確認します。紙の日報や表計算に、使えるデータが眠っている場合があります。

第三に、1ラインで試す。全工場への展開は、効果を確認してからです。

第四に、効果を数字で示す。停止時間、不良率、作業時間。次の投資を通すために必要です。

第五に、現場を巻き込む。使うのは現場の人です。押しつけた仕組みは使われません。

成果が出ている領域

実際に効果が確認しやすい用途を挙げます。

予兆保全。設備の振動や温度を監視し、故障の前に対処します。停止による損失が大きい設備ほど、投資対効果が明確になります。

外観検査。画像による不良の判定。人による検査のばらつきを減らせます。

稼働の可視化。設備がどれだけ動いているか。改善の起点になります。

技能の記録。熟練者の作業を映像やデータで残す。継承の問題に対する現実的な対処です。

いずれも、効果が数字で示せる点が共通しています。

求められる人材

この領域で必要とされる人を整理します。

製造の現場を知るIT人材。最も不足しています。工程、設備、安全要件を理解したうえでシステムを設計できる人です。

IT を理解する製造の人材。逆方向からの接近です。現場を知る人がデータを扱えるようになるほうが、速い場合もあります。

組込みの技術者。設備からデータを取り出す部分を担います。

データ分析。集まったデータから、意味のある示唆を出します。

異業種からこの領域へ移る場合、製造の業務理解が最大の障壁になります。逆に、製造業出身でITを学んだ人は希少な存在です。

この領域の位置づけ

最後に、産業全体から見た意味を整理します。

日本の製造業は、素材、部材、製造装置といった領域で優位を保っています。模倣に時間がかかり、切り替えの費用も高いためです。

この強みとデジタルを組み合わせる方向が、現実的な戦略だと考えます。純粋なソフトウェアで海外の大手と競うより、確度が高くなります。

また、この領域は海外企業が参入しにくいという特徴もあります。現場の知識と長期の関係が前提になるためです。

働く側にとっても、業務知識と技術の両方を持つ人材は代替されにくいという意味を持ちます。

現場データの扱い

製造業のデータには、他業界と異なる特徴があります。

量が多く、周期が短い。設備から1秒ごとに値が届く構成では、1日で膨大な件数になります。

すべてを保管すると費用が膨らみます。直近は細かく、古いものは要約して残す設計が一般的です。

設備側で処理する方式もあります。異常があったときだけ送る、一定の変化があったときだけ送る。通信量と費用を抑えられます。

古い設備からデータを取り出すのが最初の障壁です。出力の口がない機器には、後付けのセンサーが必要になります。

この設計は後から変えにくいため、開始時に方針を決めておく必要があります。

製品からサービスへ

製造業のDXで最も難易度が高いのが、収益構造の転換です。

従来は、製品を売って終わりでした。売った後の状態は分かりません。

稼働状況を把握できるようになると、別の売り方が可能になります。保守を含めた契約、使用量に応じた課金、稼働を保証する契約。

利点は、収益が継続することです。売り切りでは、次の買い替えまで収入がありません。

一方、組織の変更を伴います。営業の評価方法、保守の体制、会計上の処理。技術より、この転換のほうが困難です。

成功例は、稼働の停止が顧客にとって大きな損失となる設備に多く見られます。

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