単価が上がる人と上がらない人の違い。技術力だけでは説明できない部分
同じ年数、同じ技術を扱っていても、単価には差がつきます。この差は技術力の差だと考えられがちですが、実際には別の要因が効いています。この記事では、単価を決めている要素を分解し、上がる人と上がらない人の違いがどこにあるのかを整理します。あわせて、交渉のタイミングと根拠の作り方も扱います。
単価は何で決まっているのか
単価は「技術力」という一つの尺度で決まっているわけではありません。分解すると、次の要素の組み合わせです。
- 担当できる工程/要件定義から入れるか、設計以降か、製造・テストのみか
- 代わりの見つけやすさ/その領域を扱える人が市場に何人いるか
- 意思決定への関与/指示を受けて動くか、決める側に立つか
- 業務知識の有無/その業界・その業務を理解しているか
- チームへの影響/自分が動くだけか、他の人の生産性も上げるか
このうち、技術力が直接効くのは一部です。「その技術が使える人」は多くても、「その技術を使って何を作るべきか判断できる人」は少ない。 この差が単価に出ます。
イーランサーで取り扱っているITエンジニア・ITコンサルタント向け案件の単価帯は、月額50万円から150万円です。同じ言語や製品を扱っていても、この幅の中で位置が変わります。
上がる人と上がらない人の違い
工程を上げているかどうか。 実装だけを続けていると、経験年数が増えても単価は頭打ちになります。設計、要件定義、構想策定。上流に一歩でも入っているかどうかが、最も大きい分岐点です。
掛け合わせを持っているかどうか。 技術だけ、業務だけでは代わりが見つかります。「SAPが分かり、かつクラウドも分かる」「データ基盤が分かり、かつ製造業の業務も分かる」。組み合わせが希少性を作ります。
判断を引き受けているかどうか。 「どうしましょうか」と聞く側か、「こうすべきだと考えます」と示す側か。責任を引き受ける立場のほうが、単価は高くなります。
成果を説明できるかどうか。 同じ仕事をしていても、何をどう改善したかを言葉にできる人とできない人では、評価が変わります。この点は次章で詳しく扱います。
市場を見ているかどうか。 自分の単価が相場に対してどうかを知らないと、交渉の起点が作れません。動く必要はなくても、知っておくことには意味があります。
逆に、単価が上がりにくいのは次のような状態です。
- 長く同じ現場にいて、担当範囲が固定されている
- 言われたことを確実にこなすが、提案はしていない
- 技術は追っているが、業務側の理解が浅い
- 自分の成果を説明する材料を持っていない
とくに1つ目は難しい問題です。同じ現場に長くいることは信頼の証でもありますが、担当範囲が変わらなければ単価も変わりません。 更新のたびに、範囲を広げる相談ができているかどうかが分かれ目になります。
成果を言葉にする
交渉の場で最も効くのは、数字にできる成果です。
ただし、すべての仕事が数字になるわけではありません。その場合に有効とされるのが「Before / After」の構造で書く方法です。
たとえばこう整理します。
- Before/リリース作業が手作業で、毎回3時間かかっていた
- After/自動化し、20分で完了するようになった
- 影響/リリース頻度が週1回から週3回に増えた
数字が出せなくても、「何が変わったか」を構造で示すだけで説得力が変わります。
この整理は、日頃から少しずつ書き溜めておくと負担が減ります。交渉のときにまとめて思い出そうとすると、細部が抜け落ちます。次の案件の面談でもそのまま使えるので、蓄積する価値があります。
交渉のタイミング
いつ言うかで、通りやすさが変わります。
適したタイミングとされるのは次の場面です。
- 契約更新の1〜2か月前
- 大きな成果を出した直後
- 新しいスキルを習得した直後
- 担当範囲が広がったとき
避けたほうがよいのは、プロジェクトの追い込み時期と、相手が多忙な時期です。判断する余裕がない状況では、内容にかかわらず後回しにされます。
とくに契約更新の1〜2か月前は自然な起点です。次の期間の条件を決める話として持ち出せるため、突然の要求になりません。
伝え方
金額だけを言うと、交渉になりません。根拠と一緒に示すことが前提です。
構成としては、次の順序が分かりやすくなります。
- 1. 現状の共有/参画時と比べて、担当範囲や役割がどう変わったか
- 2. 成果/その結果、何が改善されたか(数字またはBefore/After)
- 3. 希望/それを踏まえて、次の期間はいくらを希望するか
- 4. 柔軟性/条件面で調整できる部分があれば添える
3の金額は、市場の相場と自分の位置を踏まえて決めます。相場を知らないまま感覚で言うと、根拠が示せません。
なお、エージェント経由の場合、交渉自体を担当者に任せられることがあります。 直接言い出しにくい場合、この方法が現実的です。事前に希望と根拠を伝えておけば、代わりに調整してもらえます。
断りにくさを制度が支えている
交渉しづらい理由のひとつに、「断られたら関係が悪くなる」という懸念があります。この点について、制度面の整備が進んでいます。
2024年11月1日に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法では、発注側に対して報酬の減額、買いたたき、正当な理由のない受領拒否などが禁止されました。取引条件を書面で明示する義務も課されています。
さらに、2026年1月には下請法が改正され、「取引適正化法」として施行されたとされています。
これらは「単価を上げてもらえる」制度ではありません。しかし不当な条件を拒める根拠が整ったことは、交渉に臨む前提として知っておく価値があります。
※ 本記事は一般的な情報の整理であり、個別の契約に関する法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士等の専門家にご相談ください。
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