建設業の2024年問題とITの役割。労働規制と、現場のデジタル化
建設業にも2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されました。工期という制約がある業種で、何が起きているのか。この記事では、ITが担える役割を整理します。
建設業の2024年問題とは
建設業では、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されました。他業種より5年間猶予されていたものです。
上限は原則、月45時間・年360時間です。特別条項を用いた場合でも、年720時間以内、複数月平均80時間以内、単月100時間未満という制約がかかります。違反には罰則があります。
猶予された理由は、長時間労働が常態化していたためです。国土交通省の資料では、令和3年度の建設業の年間実労働時間は1,978時間で、全産業平均より350時間以上長いとされます。
休日も少なく、4週4休以下で就業する割合が高い状態が続いてきました。
物流と同じ構図ですが、建設業には工期という別の制約が加わります。
なぜ長時間労働になるのか
構造を分解すると、複数の要因が重なっています。
- 工期の設定/短い工期を前提に受注すると、労働時間で吸収するほかない
- 天候/雨天で作業できない日を、他の日で取り戻す必要がある
- 人手不足と高齢化/就業者数はピーク時から約3割減少したとされる
- 書類作業/現場作業に加え、写真整理・報告書・検査資料の作成
- 移動/複数現場の巡回、直行直帰の把握が難しい
1つ目が根本にあります。建設業法では著しく短い工期の設定が禁じられており、発注者側の責任も問われる構造になっています。
したがって、現場の努力だけでは解決しません。受発注者間の工期協議が前提になります。
ITで解決できる領域
この課題に対して、技術が寄与できる部分を整理します。
勤怠管理。現場が分散し、直行直帰も多いため、労働時間の把握そのものが難しい業種です。位置情報を伴う打刻や、複数現場をまたぐ集計が求められます。
書類の電子化。写真の自動整理、報告書の作成支援、電子黒板。国土交通省も書類の削減と簡素化を推進しています。
ICT施工。ドローンによる3次元測量、ICT建機。測量と施工の時間を短縮します。
BIM/CIM。3次元モデルを設計から施工、維持管理まで通して使う取り組みです。
情報共有。現場と事務所、元請と下請の間の連絡。移動と待ち時間を減らします。
業界特有の仕組み
この分野に関わる場合、知っておくべき制度があります。
建設キャリアアップシステム(CCUS)。技能者の資格と就業履歴を蓄積し、現場が変わっても実績を評価できるようにする仕組みです。国が推進しています。
工期に関する基準。適正な工期設定のための指針が定められています。
電子契約と電子申請。建設業許可や経営事項審査など、行政手続きの電子化も進んでいます。
これらは制度と紐づくため、仕様が定められています。独自に設計する余地は限られ、制度の理解が前提になります。
現場に導入する難しさ
他業種と異なる制約を整理します。
通信環境。山間部やトンネル、地下。電波が届かない現場があります。接続がなくても動く設計が必要になる場合があります。
端末の条件。手袋をしたまま操作する、粉塵や雨に耐える、直射日光下で画面が見える。
利用者の幅。年齢層が広く、機器の扱いに慣れていない方も多くいます。操作が複雑な仕組みは使われません。
多層の下請構造。元請が導入しても、下請が使わなければ効果が出ません。
現場を見ずに設計すると、使われない仕組みになります。
この領域で働くこと
技術者の観点から整理します。
需要は構造的に続きます。人手不足と労働規制という2つの圧力があり、効率化は避けられません。
現場の業務理解が前提です。施工の流れ、職種ごとの役割、安全管理。知らずに要件は定義できません。
建設業の実務経験がある人がIT側へ移る場合、大きな強みになります。この組み合わせを持つ人材は希少です。
成果が数字で出るのも特徴です。労働時間、書類作成の時間、手戻りの回数。改善が測定できます。
社会基盤の維持に直結する領域でもあります。
人手不足という前提
労働時間を制限しても、必要な工事量は減りません。差を埋める手段が問われます。
就業者数はピーク時から大きく減少しており、55歳以上の比率が高く、29歳以下は1割程度という構成が続いています。
若年層が定着しない理由として、休みの取りづらさ、危険を伴う作業、賃金水準が挙げられています。
建設キャリアアップシステムは、この課題への制度的な対応です。技能と就業履歴を記録し、現場が変わっても評価される仕組みを目指しています。
処遇の改善と効率化を同時に進めるという構図であり、ITは後者を担います。
何から着手するか
導入の優先順位を整理します。
第一に、労働時間の把握。規制に対応するには、まず実態を測る必要があります。把握できていなければ、超過にも気づけません。
第二に、書類の削減。現場作業より、報告・写真整理・検査資料に時間を取られている場合があります。
第三に、情報共有。連絡のための移動と待ち時間を減らします。
第四に、施工そのものの効率化。ICT建機や3次元測量。投資額が大きく、規模のある事業者から導入が進みます。
小規模な事業者では、1つ目と2つ目だけでも効果が出ます。
本文中の数値は各調査時点のものです。調査主体により定義や推計方法が異なるため、出典を確認のうえご参照ください。
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