IaCの始め方。Terraformを使う前に決めておくこと
IaCは、ツールの使い方より運用の設計で差がつきます。書き方を覚えて動かすところまでは早く進めますが、チームで使い始めた途端に問題が出る。この記事では、Terraformなどを導入する前に決めておくべきことと、既存環境がある場合の現実的な進め方を整理します。
IaCで何が変わるのか
IaC(Infrastructure as Code)は、サーバーやネットワークの構成をコードとして記述し、そのコードから環境を作る考え方です。
手作業での構築と比べた利点は明確です。
- 同じ構成を何度でも正確に再現できる
- 変更の履歴が残り、誰が何をいつ変えたか追える
- レビューの対象になり、適用前に問題を指摘できる
- 開発環境と本番環境の差異が生まれにくい
もっとも実感しやすいのは3つ目です。管理画面での作業は、実行してから気づくのに対し、コードなら適用前に他の人が確認できます。設定ミスによる障害を、事前に止められるようになります。
ツールの選び方
主な選択肢は2つです。
| ツール | 特徴 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| Terraform | 複数のクラウドに対応。記述が簡潔。利用者が多く情報を得やすい | 複数クラウドを使う。将来的な移行の可能性がある |
| CloudFormation | AWS専用。AWSの新機能への対応が早く、追加のツール管理が不要 | AWSのみで完結する。運用を単純に保ちたい |
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案件で見かける頻度が高いのはTerraformです。複数のクラウドを扱う現場が増えているためで、AWS単独の環境でもTerraformを選ぶケースがあります。
ただし、AWSだけで完結し今後も変わらないのであれば、CloudFormationのほうが管理する要素は少なくなります。「流行っているから」ではなく、環境の実態で選ぶのが妥当です。
状態ファイルの扱いを最初に決める
Terraformを使ううえで、最初に決めるべき最重要事項がこれです。
Terraformは「いま実際にどんな資源があるか」を記録したファイルを持ちます。これを基準に差分を判断するため、このファイルが壊れる、あるいは食い違うと、正しく動作しなくなります。
個人で試す段階では手元に置いても動きますが、チームで使うなら共有の保管場所が必要です。
- 共有ストレージに置く/S3などのクラウドストレージに保管し、チーム全員が同じものを参照する
- 同時実行を防ぐ/2人が同時に適用すると、状態が壊れます。ロックの仕組みを併用する
- バージョン管理を有効にする/壊れたときに戻せるようにしておく
- 機密情報の扱いに注意する/状態ファイルにはパスワードなどが平文で入ることがあります。アクセス権限を絞る
ここを決めずに始めると、後から移行する作業が発生します。 最初に決めておくほうが確実に楽です。
ディレクトリ構成と環境の分け方
開発・検証・本番をどう分けるかも、早い段階で決める必要があります。
よく取られるのは、環境ごとにディレクトリを分け、共通部分をモジュールとして切り出す構成です。
- 環境ごとの差分は変数で表現する(インスタンスの大きさ、台数など)
- 構成そのものは共通のモジュールで持つ
- 本番だけ手作業で変えた、という状態を作らない
最後の点が重要です。コードと実態がずれた瞬間、IaCの利点は失われます。 緊急対応で管理画面から直接変更した場合は、必ずコードに反映して整合を取る運用が要ります。
既存環境があるときの進め方
すでに手作業で作った環境がある場合、一度に全部をコード化しようとすると挫折します。現実的なのは段階的な移行です。
- 新規に作るものから始める/これから追加する資源だけコードで作る。既存には触らない
- 影響の小さい範囲から取り込む/検証環境、あるいは停止しても業務が止まらない部分から
- 既存資源を取り込む機能を使う/手作業で作った資源をTerraformの管理下に移す仕組みがあります
- 本番は最後にする/手順が固まってから着手する
「全部をきれいにしてから運用に乗せる」という進め方は、たいてい途中で止まります。 動いているものを止めずに、少しずつ範囲を広げるほうが確実です。
つまずきやすい点
- 適用前の確認を省く/実行計画を確認せずに適用すると、意図しない資源の削除が起きます。特に本番では必ず内容を読む
- 作り直しになる変更に気づかない/設定によっては、変更ではなく削除と再作成が行われます。稼働中の資源では致命的です
- バージョンを固定しない/ツールやプロバイダの版が変わると挙動が変わることがあります。固定して管理する
- 機密情報をコードに書く/リポジトリに残ります。専用の管理サービスや環境変数を使う
- 手作業との併用/一部だけ管理画面で変更する運用が混ざると、差分が読めなくなります
2つ目は実務でとくに事故になりやすい部分です。実行計画に「破棄して作り直す」と表示されていないか、適用前に必ず確認する習慣が要ります。
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