技術トレンド

セキュリティ人材の需要が高まる理由。OWASP Top 10の更新と、制度で変わる企業の動き

イーランサー・ジャパン株式会社 約4分

セキュリティの案件が増えている理由は、漠然とした危機感ではありません。参照される基準が更新され、取引先から対策を求められる制度が動き始めたという、具体的な変化が背景にあります。この記事では、いま何が変わったのか、どんな案件が発生しているのか、そして関わるために必要なスキルを整理します。

なぜいま需要が高まっているのか

理由は3つに整理できます。

とくに2つ目が実務に直結します。これまで「やったほうがよいこと」だった脆弱性診断が、「取引を続けるために必要なこと」に変わりつつあるためです。

OWASP Top 10という基準

OWASP Top 10は、世界中の専門家コミュニティが実際の攻撃データを分析してまとめた、Webアプリケーションの重大な脆弱性のランキングです。脆弱性診断の項目も、この基準に沿って設計されることが一般的です。

2025年版では、それまで「コード品質の問題」として分散して扱われていた項目が整理され、予期しない入力やリソース不足、内部障害への対応の不備を扱うカテゴリが新設されました。

具体的には、次のような事象が対象になります。

いずれも「動作としては例外的な場面」の話です。正常系だけを見ていては見つからない部分が、独立したリスクとして扱われるようになったという変化です。

その他、アクセス制御の不備、ソフトウェアとデータの完全性の問題、ログと監視の失敗、SSRF(サーバーサイドリクエストフォージェリ)といった項目が挙げられています。なお、OWASP Top 10は代表的な脆弱性をまとめたものであり、これを満たせば安全というものではありません。

サプライチェーン対策評価制度

この制度は、取引関係でつながる企業群全体のセキュリティ水準を引き上げることを目的としています。2026年度から段階的な導入が予定されており、企業は早期の準備を求められています。

実務への影響は明確です。

3つ目が見落とされがちです。診断して終わりではなく、説明できる形で記録を残す運用が必要になります。ここに人手がかかります。

OSSの脆弱性という現実的なリスク

いまのWebアプリケーション開発は、オープンソースソフトウェア(OSS)の利用を前提としています。そのOSSに重大な脆弱性が見つかれば、それを使っているすべてのシステムが影響を受けます。

2025年12月には、ReactやNext.jsに「React2shell」と呼ばれる脆弱性(CVE-2025-55182、CVE-2025-66478)が発見されました。リモートコード実行が可能という深刻な内容で、迅速な対応が求められた事例です。

この種のリスクに備えるには、自社が何を使っているかを把握し続ける必要があります。依存関係の一覧を管理し、脆弱性情報を継続的に監視する仕組みが、開発チームの標準的な装備になりつつあります。

加えて、パッチの適用が難しいIoT機器の増加も、このリスクを押し上げている要因とされています。

案件の種類

社内に専門人材がいない企業では、診断そのものを外部に委託しつつ、判断できる人材を内部に置くという形が取られます。この「判断できる人材」の部分が、外部人材の活用対象になりやすい領域です。

求められるスキル

実務でとくに問われるのが、最後の2つです。ツールが出した警告をそのまま渡しても、開発は動きません。 どれが本当に危険で、どう直せばよいのかを、開発側の言葉で伝えられるかどうかが成果を分けます。

キャリアの広げ方

開発経験からの移行は、有力な道筋です。コードが読め、システムの構造が分かる人は、脆弱性の原因を特定できます。診断専門で始めるより、実装経験を持つほうが強い場面が多くあります。

インフラ・クラウドからの移行も自然です。権限設計、通信制御、ログ管理はそのままセキュリティの中核であり、知識の重なりが大きい領域です。

制度・運用側へ広げる方向もあります。診断の実施だけでなく、社内の体制づくりや取引先への説明までを担える人材は、制度対応が本格化するなかで需要が高まります。

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