ウェルネスビジネスの可能性。11分野の市場構造と、参入の考え方
ウェルネスは健康食品やフィットネスの話に見えますが、実際には11の分野からなる産業群です。市場規模ではITや観光を上回るという推計もあります。この記事では、どの分野に何があるのか、日本市場がどこに位置するのか、参入を考えるときに何を見るべきかを整理します。
産業としての規模
Global Wellness Institute の調査によれば、世界のウェルネス経済は2024年に6.8兆ドルに達したとされます。2023年から2024年で7.9%成長し、2013年比では倍増したと報告されています。
この規模は、スポーツ(2.7兆ドル)、観光(5兆ドル)、グリーン経済(5.1兆ドル)、IT(5.3兆ドル)を上回るとされます。同調査では2029年に9.8兆ドルに達するという予測も示されています。
同調査では国別の規模も集計されており、日本は世界でも上位に位置する市場とされています。国内では成熟産業に見える領域でも、世界の中では大きな市場です。
11の分野に分かれている
ウェルネス経済は11の分野で構成されます。規模の大きい順に、おおよそ次の並びとされます。
- パーソナルケア・美容/最大の分野。日用品から専門的なケアまで幅広い
- 健康的な食事・栄養・減量/食品、サプリメント、食事管理サービス
- 身体活動/フィットネス、スポーツ用品、関連アプリ
- ウェルネスツーリズム/健康を目的とした旅行。消費単価が高い
- 伝統・補完医療/地域ごとの慣行に根ざした領域
- 予防医療・個別化医療・公衆衛生/医療の手前にある領域
- ウェルネス不動産/健康を前提に設計された住宅・オフィス
- メンタルウェルネス/睡眠、瞑想、ストレス管理
- スパ/温浴・温泉/職場の健康/それぞれ独立した市場を形成
成長が著しいとされるのは、ウェルネス不動産とメンタルウェルネスです。米国のメンタルウェルネス市場は1,250億ドルとされ、2位の中国(160億ドル)を大きく引き離しています。
ウェルネスツーリズムという領域
個別分野の中で、日本にとって現実的な機会があるのがウェルネスツーリズムです。
調査によれば、ウェルネス目的の国際旅行者の消費単価は通常の国際旅行者より41%高く、国内旅行者では平均の2.75倍とされます。単価が高いため、地域経済への波及が大きくなります。
温泉、食、自然、寺社。日本が既に持っている資源が、そのままこの分野の構成要素である点が特徴です。新たに作るのではなく、既存の資源を別の文脈で提示する形になります。
テクノロジーとの接点
IT側から見ると、ウェルネス産業はデータを扱う仕組みが不足している領域です。
予約管理、会員管理、ウェアラブル端末からのデータ活用、個別化されたプログラムの設計。いずれもソフトウェアの課題ですが、事業者側にその人材がいないことが多くあります。
ただし注意点があります。健康に関わるデータは扱いの難易度が高く、医療行為との線引きも必要です。効果を謳う表現は薬機法などの規制対象になり得ます。技術的に作れることと、事業として提供できることは別です。
参入を考えるときに見るべき点
3点を確認しておくと、判断を誤りにくくなります。
ひとつ目は「どの分野か」を特定することです。11分野は規模も競争環境も規制もまったく異なります。「ウェルネス」という括りのまま議論すると、話が噛み合いません。
ふたつ目は継続課金が成立するかです。健康関連は、一度買って終わる商材と、継続的に関与する商材で経済性が大きく変わります。
みっつ目は効果の主張をどこまでするかです。ここが規制と信頼性の両方に直結します。市場が大きいという事実は、参入が容易であることを意味しません。
日本の資源をどう活かすか
ウェルネスの11分野のうち、日本が既に強みを持つ領域があります。
温泉、食、自然、伝統的な健康習慣。これらは新たに作る必要のない資源です。課題は、その価値を海外の利用者に伝わる形で提示できていないことにあります。
調査では、ウェルネス目的の旅行者の消費単価が通常の旅行者より高いことが示されています。同じ資源でも、提示の仕方で単価が変わるということです。
実務的には、多言語での情報提供、予約の仕組み、決済手段の整備といった体験そのものではない部分に伸びしろが残っています。
ITの人材が関われる具体的な仕事
この産業でソフトウェアが不足している領域は具体的です。
- 予約と顧客管理/個人事業に近い事業者が多く、仕組みが未整備
- データの可視化/ウェアラブル端末や問診の情報を、提供側が使える形にする
- プログラムの個別化/利用者ごとの内容の組み立て
- 多言語対応/インバウンドの受け入れに直結する
参入する際は、健康に関わる表現の規制を先に確認することが必要です。効果を断定する表現は薬機法などの対象になります。作れることと提供できることを分けて設計するのが実務の要点です。
- Global Wellness Institute「Global Wellness Economy Monitor 2025」
- Global Wellness Institute プレスリリース(2025年11月19日)
- 日本経済研究所「ウェルネスツーリズム ~心身と地域を元気にする旅行~」
本文中の数値は各調査時点のものです。調査主体により定義や推計方法が異なるため、出典を確認のうえご参照ください。
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