夢だった海外駐在を辞めた。それでも、世界で働くことは諦めなかった
学生時代はサッカーに没頭し、社会人になってからは海外で働くことを目指した。念願だった駐在を実現したその場所で、彼が考えるようになったのは「自分は何者なのか」という問いだった。かつて思い描いた「海外で働く」とは違う道。それでも振り返れば、そのキャリアはずっと「日本と世界をつなぐ」という一本の線でつながっていた。
サッカーに没頭した学生時代。そして「世界で働く」という目標
学生時代、生活の中心にあったのはサッカーだった。
一方で、将来について考える中で強くなっていったのが、グローバルな環境で働きたいという思いだった。いつか海外に駐在し、世界を舞台に仕事をする。
そんな目標を持って社会人としてのキャリアをスタートさせ、新卒で選んだのがヤクルト本社だった。入社後は約4年間、日本国内でヤクルトレディに関わる領域に従事する。
そして入社5年目。ついに、学生時代から目標としていた海外駐在のチャンスが訪れた。行き先は、フィリピン・マニラ。念願だった「海外で働く」という生活が始まった。
夢だった海外駐在で、「自分は何者なのか」を考えた
マニラでの生活は、日本にいた頃とは大きく変わった。高層マンションで暮らし、移動には送迎のタクシーが用意される。
一見すれば、恵まれた海外駐在生活だった。けれど、その環境に身を置く中で、次第に違和感を抱くようになった。
「自分はまだ、何も成し遂げていない」
海外で働き、高層マンションに住み、送迎付きの生活を送る。しかし、それは自分自身の力で手に入れたものなのか。「このままこの環境にいたら、自分は何かを成し遂げた人間だと勘違いしてしまうんじゃないか」。そんな危機感を持つようになった。
自分は何者なのか。何のために生きているのか。自分自身の力で、何を生み出せるのか。長年追いかけてきた目標を叶えた場所で、今度は自分自身の人生について考えるようになった。
マニラのスラム街を歩きながら考えた、これからのキャリア
仕事でも、想像していた海外駐在とのギャップがあった。
現地で任された仕事の一つが、ヤクルトレディの採用だった。マニラのスラム街を毎日のように歩き、現地で商品を販売してくれる人を探し、声をかける。
日本でも約4年間、ヤクルトレディに関わる仕事を経験してきた。海外駐在では、よりマネジメントに軸足を移し、新しい経験を積んでいくことを想像していた。しかし、マニラでも現場での採用活動を続けることになった。
ただ、その日々に得るものがなかったわけではない。現地の言葉で挨拶を交わし、暮らしの事情を聞き、生活の中に入っていく。資料や数字では分からないことが、歩いた分だけ見えてきた。まず相手の懐に入り、信頼を得てから話を進める。この順序は、のちに自分の名前で世界へ発信を始めたときにも、そのまま生きることになる。
このまま同じ仕事を続けていて、自分は成長できるのだろうか。恵まれた生活への違和感と、キャリアへの危機感。それらが重なり、会社を離れることを決断した。夢だった海外駐在を手放す選択だった。
会社の肩書きとは別に始めた「taitojapanese」
そんな時期に、自分自身で始めていたものがあった。日本語や日本文化を世界へ発信する「taitojapanese」だ。
会社から与えられた仕事ではない。自分で考え、自分でつくり、自分の名前で世界へ届ける。
発信を続ける中で、少しずつ海外の人たちから反応が集まり始めた。そして現在、「taitojapanese」のSNS総フォロワー数は30万人を超えるまでに成長している。
海外のフォロワーからは「タイトジャパニーズ」、そして日本語を教える存在として「タイト先生(タイトセンセイ)」とも呼ばれるようになった。肩書きではなく、発信の積み重ねが呼び名をつくった。
マニラで「自分は何者なのか」と考えていた一人の会社員が、自分自身の発信によって世界中の人とつながるようになった。
日本語から、日本のアニメへ
現在は、日本のIP企業に所属している。仕事は、日本のアニメIPを海外へ広げていくためのマーケティングと営業だ。海外を飛び回りながら、日本で生まれたコンテンツを世界へ届けている。
そして個人では「taitojapanese」を通じて、日本語や日本文化を世界へ発信する。会社員としても、個人としても、日本と世界をつなぐ。
振り返ってみれば、学生時代に描いていた「グローバルな環境で働きたい」という思いは、形を変えながら今も続いている。ただ、その実現方法が「海外駐在」だけではなかった。
「世界で働く」に、ひとつの正解はない
海外で働きたい。そう考えたとき、多くの人が海外駐在や海外就職といったキャリアを思い浮かべる。彼自身も、かつてはそうだった。
そして実際にその目標を叶えたからこそ、「本当に自分が求めていたものは何なのか」を考えることになった。
夢を叶えることと、自分らしく生きることは、必ずしも同じではない。一度選んだ道を変えることもできる。会社に所属しながら、自分自身の活動を育てることもできる。そして、最初に思い描いていた方法とはまったく違う形で、同じ夢にたどり着くこともある。
海外駐在を手放した彼は今、世界を飛び回りながら日本のIPを届け、30万人を超える人たちに日本語と日本文化を発信している。
キャリアは、一直線である必要はない。大切なのは、「どこで働くか」だけではなく、その場所で自分が何をしたいのか。
「自分は何者で、何のために生きているのか」。マニラで生まれたその問いへの答えを、彼は今も、自分自身のキャリアを通じてつくり続けている。
日本語と日本文化を世界へ発信する「taitojapanese」。「タイトジャパニーズ」「タイト先生(タイトセンセイ)」の名でも知られる。SNS総フォロワー数は30万人を超える。現在は日本のIP企業で、日本のアニメを世界へ届けるマーケティング・営業に携わる。
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