サーチエンジニアとは。検索基盤を担う職種の仕事とスキル
検索は、どのサービスにもある機能でありながら、専門に担う人が少ない領域です。生成AIの普及で検索の重要性が上がり、あらためて注目されています。この記事では、サーチエンジニアが何をする職種なのかを整理します。
どういう職種か
サーチエンジニアは、サービス内の検索機能を設計し、精度を上げ続ける職種です。検索窓に文字を入れて結果が並ぶ、あの部分を専門に扱います。
一見すると単純な機能に見えますが、「意図した結果が上に出る」状態を保つのは継続的な作業です。商品が増え、ユーザーの入力の癖が変わり、季節で需要が動くたびに、同じ設定では結果がずれていきます。
専任を置く企業は多くありません。そのためバックエンドエンジニアが兼務していて、誰も改善を担当していないという状態がよく見られます。
なぜいま注目されるのか
理由は2つあります。
ひとつは、検索がそのまま売上に効くと理解されてきたこと。ECや求人、不動産のように「探して選ぶ」サービスでは、検索結果の質がコンバージョンに直結します。広告費をかけて集めた人が、探しているものを見つけられずに離脱していれば損失です。
もうひとつは、生成AIの土台に検索が入ったこと。RAGのように外部データを参照して回答する仕組みでは、検索が外すと、その後どれだけ良いモデルを使っても正しい答えは出ません。AIの精度問題が、実は検索の問題だったという場面が増えています。
実際の仕事
業務は大きく4つに分かれます。
- 検索基盤の構築/どの検索エンジンを使い、データをどう入れるかを設計する
- インデックス設計/何を検索対象にし、どう分解して保存するかを決める
- ランキングの調整/どの結果を上に出すか。関連度と事業上の優先度をどう混ぜるか
- 評価と改善/クリック率や離脱を見て、当たっていない検索を見つけて直す
実務で時間を使うのは3番目と4番目です。基盤の構築は最初の数か月で終わりますが、ランキングの調整に終わりはありません。
使う技術
中心になるのは全文検索エンジンです。
- Elasticsearch / OpenSearch/最も採用例が多い。運用の知見も豊富
- Solr/古くから使われている。既存システムで残っていることが多い
- マネージドの検索サービス/クラウド各社やSaaSが提供。運用負荷を下げられる
- ベクトルデータベース/意味の近さで探す用途。全文検索と併用する構成が増えている
加えて、日本語特有の課題があります。英語と違って単語が空白で区切られていないため、文章をどう分割するかで結果が変わります。表記ゆれ、同義語、送り仮名の違いも扱う必要があります。
この日本語処理の知見が、参入障壁になっている面があります。海外の事例をそのまま持ち込んでも、日本語では期待どおりに動きません。
キーワード検索とベクトル検索
従来の検索は、入力された文字列と一致するものを探します。対してベクトル検索は、意味の近さで探します。「軽いノートパソコン」で「モバイルPC」が出てくるのはこちらの働きです。
ただし、ベクトル検索に置き換えれば良いというものではありません。
- キーワード検索が得意/型番、固有名詞、正確な一致が求められるもの
- ベクトル検索が得意/曖昧な表現、言い換え、意図をくんだ検索
実務では両方を走らせて結果を統合する構成が主流です。どちらを重く見るかの調整が、そのままサーチエンジニアの腕になります。
求められるスキル
技術だけでは務まらない職種です。
- 検索エンジンの理解/インデックスの仕組み、スコアの計算方法を把握している
- データを見る力/ログから「当たっていない検索」を見つけ出せる
- 事業の理解/何を上位に出すべきかは、事業の目的で決まる
- 評価を設計する力/改善したと言うには、測る仕組みが先に要る
3番目が抜けると、技術的には正しいが事業には合わない検索ができあがります。在庫のない商品を関連度が高いという理由で上位に出しても、事業上は損失です。
キャリアの広げ方
入り口は複数あります。
- バックエンドから/最も多い経路。既存システムの検索改善から専門性を深める
- データ分析から/ログ分析や評価設計の経験を、検索改善に転用する
- 機械学習から/ランキング学習やベクトル検索の側から入る
広げ方としては、推薦(レコメンド)への展開が自然です。検索は「探しに来た人に出す」、推薦は「探していない人に出す」という違いだけで、扱う技術とデータは重なります。
専任の求人はまだ多くありませんが、検索を担える人材そのものが少ないため、需要に対して供給が追いついていない状態です。
発注する側の視点
自社サービスの検索を改善したい場合、最初にやることは人を探すことではありません。
- 検索ログを取っているか確認する。取っていなければ、そこから始める
- 結果がゼロ件になっている検索語を洗い出す
- 検索した人と、しなかった人のコンバージョン差を測る
- そのうえで、改善に見合う規模かを判断する
2番目のゼロ件検索は、最も分かりやすい改善余地です。ユーザーが探しているのに何も出てこない状態が、日々どれだけ起きているか。これを見ずに検索エンジンを入れ替えても、同じ問題が残ります。
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