東南アジアのIT市場とは。国ごとの違いと、協働の進め方
東南アジアは、国によって状況が大きく異なる地域です。この記事では、それぞれの位置づけと、日本企業がどう関わるかを整理します。
地域の全体像
東南アジアは、国によって状況が大きく異なります。まとめて語ることが難しい地域です。
- シンガポール/地域の拠点。多国籍企業のアジア本社が集まる。人件費は高い
- ベトナム/オフショア開発の主要な受け皿。技術者の供給が拡大している
- インドネシア/人口が最大。国内市場としての規模が大きい
- フィリピン/英語が通じる。業務委託の受託で実績がある
- タイ/製造業の集積があり、その関連需要がある
- マレーシア/多言語環境。地域拠点としての選択肢
目的によって、選ぶべき国が変わります。開発の委託先ならベトナム、市場としてならインドネシア、地域統括ならシンガポールという整理が一般的です。
ベトナムという選択肢
日本企業との関わりが最も深いのがベトナムです。
オフショア開発の委託先として、日本企業からの需要が長く続いています。理由は複数あります。
日本語を学ぶ人材の層。他の東南アジア諸国と比べ、日本語での業務が可能な技術者が多くいます。
時差が2時間と小さく、同じ時間帯で働けます。
技術者の供給。理工系教育に力を入れており、若い世代の人口も多い構成です。
ただし、単価は上昇しています。費用だけを目的とした委託は、以前ほどの効果が得られなくなっています。
市場としての規模
委託先ではなく、顧客としての側面も整理します。
人口規模が大きく、若い層が厚いのが地域の特徴です。デジタルサービスの利用が急速に広がっています。
電子商取引、配車、決済の分野で、地域発の大手企業が成長しました。日本や欧米の企業が後から参入しても、既存の勢力が強い状況です。
スマートフォンが最初の接点という点も特徴です。パソコンを経ずにモバイルから入る利用者が多く、サービスの設計に影響します。
参入する場合、現地の慣行への適応が必要です。決済手段、物流、言語。日本での成功例がそのまま通じるとは限りません。
協働の進め方
実際に委託する場合の要点を整理します。
仕様を明示する。日本国内の委託以上に、暗黙の了解が通じません。書かれていないことは実装されない前提で進めます。
ブリッジ人材の確保。両国の言語と業務を理解し、間をつなぐ役割です。この人材の質が、成否を大きく左右します。
直接の対話。文書だけでなく、定期的に会話する機会を持つほうが、認識のずれが早く見つかります。
離職への備え。担当者が替わる前提で、知識を記録に残す運用が必要です。
祝日と長期休暇。各国の祝日は日本と異なり、旧正月には長期の休みが入ります。計画に織り込む必要があります。
費用の実際
委託の判断材料として、費用構造を整理します。
単価は日本国内より低い水準ですが、差は縮まっています。とくに経験を積んだ技術者では、上昇が顕著です。
見落とされやすいのが、間接的な費用です。仕様の作成、翻訳、確認、品質検査、往来の費用。これらを含めると、想定ほど安くならない場合があります。
効果が出やすいのは、規模が大きく、仕様が明確で、長期継続する案件です。逆に、小規模で仕様が変わりやすい案件では、管理の負担が上回ります。
費用削減より、人材確保の手段として捉えるほうが、実態に合う場合が増えています。
日本企業にとっての位置づけ
最後に、この地域との関わり方を整理します。
日本のIT人材不足は2030年に最大約79万人と試算されており、国内だけでは埋まりません。この文脈で、地域の人材は現実的な選択肢になります。
ただし、下請けとしての扱いでは選ばれなくなっています。欧米企業も同じ人材を求めており、条件で競合します。
地理的な近さと時差の小ささは、日本にとっての優位です。同じ時間帯で働けることは、協働の質に影響します。
市場としても人材の供給源としても、長期的に関係を築く価値がある地域だと考えます。
デジタル経済の成長
この地域の市場としての側面を、もう少し詳しく整理します。
スマートフォンが最初の接点という点が、サービスの形を決めています。パソコン向けの設計をそのまま持ち込んでも、使われません。
決済手段が多様です。国ごとに主流の方式が異なり、現金決済が残る地域もあります。参入時には、この対応が必須になります。
物流が課題となる地域もあります。電子商取引の成長には、配送網の整備が伴う必要があります。
地域発の大手企業が既に強いという点も重要です。配車、電子商取引、決済。後発で参入する場合、既存の勢力との競合になります。
「成長市場だから入れる」とは限りません。参入の設計が問われます。
長期的な関係づくり
委託先としてだけでなく、関係の築き方を整理します。
短期の発注を繰り返す関係では、良い人材は配置されません。継続的な取引の見通しがあることが、体制の質を左右します。
教育への関与も選択肢です。現地の大学や教育機関と連携し、人材を育てる取り組みを行う企業があります。
日本での就業機会を用意する形もあります。現地で採用し、一定期間日本で働いてもらい、その後現地に戻る。両国の理解を持つ人材が育ちます。
いずれも時間がかかりますが、単発の委託より安定した関係になります。
人材確保が構造的な課題である以上、長期の視点が必要だと考えます。
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