韓国のIT人材市場はどう変わったか。AI求人の急増と、海外エンジニア活用の実際
韓国のIT人材市場は、ここ1〜2年で採用の対象が明確に動きました。AI関連の求人が急増する一方、新卒・未経験向けの入口は縮小しています。国内で足りない分を海外エンジニアで埋める動きも、外注の枠を超えて広がっています。この記事では、その変化を数字で確認し、日本から見てどう読むべきかを整理します。
AI関連求人が増え、新卒の入口が狭まった
韓国のIT人材市場では、採用の対象が実務経験を持つ人材に明確に寄っています。2026年上半期のAI関連求人は前年同期比で128%増加し、なかでも経験者向けの求人は140%の伸びを見せました。
一方で、2025年第1四半期の新卒・未経験の開発者向け求人は、前年同期比18.9%の減少です。全体の求人数が増えているのに、入口だけが縮んでいるという構図になります。
この2つを並べると、企業側の意図が見えてきます。人員を増やすこと自体が目的ではなく、着任してすぐプロジェクトに入れる人材を選んで採る、という方向への転換です。
なぜ「育てる」より「採る」に寄るのか
AI関連の案件は、技術の前提が短い周期で入れ替わります。社内で育成する場合、育て終わる頃には前提が変わっているという事態が起こりやすく、育成期間そのものがリスクになる局面が増えました。
もうひとつは、案件の性質です。AIの導入プロジェクトは実証から始まることが多く、期間が区切られています。期間が区切られた仕事に、育成前提の人員を充てる判断は取りにくくなります。
ただし、この傾向が続くほど経験者の供給は細ります。新卒の入口を閉じれば、数年後に経験者が生まれなくなるためです。現在の採用構造は、中期的には自分の首を絞める形になっているとも言えます。
AIスキルが開発職の外へ広がっている
もうひとつの変化は、AIを扱う職種の範囲です。企画、事業戦略、コンテンツといった非開発の職種にも急速に広がっています。
これは職種の境界が動いているということです。求められているのは「AIが使える人」ではなく、自分の職務領域の課題をAIで解ける人に変わりつつあります。
エンジニアにとっては、開発能力に加えて実務でAIを使って成果を出した経験が、そのまま市場価値になる段階に入ったことを意味します。
足りない分を海外エンジニアで埋める
国内で必要なIT人材を確保できない場合、韓国企業はインドやベトナムなどの海外エンジニアを活用するケースを増やしています。
ソフトウェア政策研究所の調査では、韓国企業が採用した海外デジタル人材のうちインド出身者の割合が最も高く、雇用形態は次のような内訳でした。
- 正規雇用/海外デジタル人材の81.7%。業務委託ではなく、社員として迎えている
- 海外からのリモート勤務/39.0%。来日・来韓せず、現地に居たまま参加している
注目すべきは81.7%が正規雇用だという点です。一時的な人手の補填ではなく、組織の一員として長く働いてもらう前提で採っていることになります。
外注から、組織に組み込む形へ
従来、海外エンジニアの活用といえば外注開発が中心でした。仕様を渡して成果物を受け取る、という切り分けです。
現在広がっているのは、それとは別の形です。
- 海外エンジニアを直接雇用し、自社の開発組織に組み込む
- 現地に居たままリモートで参加してもらう
- 海外に開発拠点そのものを設ける
いずれも自社の開発組織の一部として扱うという点で共通しています。一部の韓国企業では、海外エンジニアを開発チームに直接編入することで、プロジェクト期間の短縮や開発人員の補完に充てています。
この形を取ると、仕様の受け渡しで生じる往復が減ります。一方で、評価制度や労務の設計を自社で抱えることになるため、外注より運用の負荷は上がります。
日本から見てどう読むか
韓国で起きていることの多くは、日本でも同じ方向に進んでいます。AI案件の増加、経験者偏重、人材不足。前提条件がよく似ているためです。
ただし、海外エンジニアの受け入れ方には差があります。日本では業務委託やオフショアの形が依然として主流で、正規雇用で迎える比率は韓国ほど高くありません。
どちらが優れているという話ではありません。直接雇用は組織の一体感と引き換えに労務の負荷を抱え、業務委託は柔軟さと引き換えに知見が社内に残りにくくなります。自社がどちらの負荷を引き受けられるかで、選ぶ形が決まります。
確かなのは、国内だけで必要な人材を揃える前提が崩れつつあることです。選択肢として海外を持っておくかどうかが、数年後の開発体制の差になります。
- AI関連求人・経験者求人・新卒求人の増減/韓国国内の求人データに基づく集計(2026年上半期/2025年第1四半期)
- 海外デジタル人材の雇用形態・出身国の内訳/ソフトウェア政策研究所(SPRi/소프트웨어정책연구소)「国内企業の海外デジタル人材の活用実態」
※ 各数値は公表時点のものです。市場動向は変化しますので、最新の状況は出典元をご確認ください。
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