技術トレンド

社会インフラのシステムとは。止められない仕組みの設計と課題

イーランサー・ジャパン株式会社

電力、鉄道、水道。これらを支えるシステムは、一般的な業務システムとは前提が異なります。この記事では、その特殊性と課題を整理します。

社会インフラのシステムとは

電力、ガス、水道、鉄道、通信、道路。これらを支えるシステムは、一般的な業務システムとは前提が異なります。

止まると社会が止まるという点が、すべての設計判断の起点になります。

扱う領域は幅広く、制御系(設備を直接動かす)、監視系(状態を把握する)、業務系(料金計算、顧客管理)に分かれます。

制御系はとくに要求が厳しく、ミリ秒単位の応答や、数十年の稼働が前提となる場合があります。

この領域では、最新技術より実績のある技術が選ばれます。

この分野の特徴

他業界との違いを整理します。

2つ目の帰結として、古い技術が現役で動いています。COBOLで書かれたシステム、独自の通信規格。これらを扱える人材が減っていることが、この分野の課題です。

セキュリティという論点

近年、この分野で最も注目される課題です。

攻撃の対象になった場合、社会的な影響が極めて大きくなります。電力の停止、鉄道の運行障害、水道の供給停止。

従来は、外部ネットワークから切り離すことで守られていました。制御系は独立した閉じたネットワークで運用する方式です。

しかし、遠隔監視や保守の効率化のため、接続が増えています。この結果、攻撃の経路が生じます。

古いシステムほど対策が困難です。更新できない、認証の仕組みがない、暗号化に対応していない。

経済産業省の資料でも、セキュリティ人材の不足が指摘されています。この領域はとくに深刻です。

更新という難題

老朽化したシステムをどう扱うかが、共通の課題です。

止められない。更新のために停止できる時間が、極めて限られます。

仕様が不明。作った人が退職し、資料も残っていない場合があります。

影響範囲が読めない。物理設備と連動しているため、変更の影響が予測しにくくなります。

検証が困難。本番と同じ環境を用意することが難しい場合があります。

結果として、更新が先送りされ、さらに扱いにくくなるという循環が生じます。この構造を断つには、計画的な投資が必要ですが、効果が見えにくいため優先度が上がりにくい面があります。

求められる人材

この分野で必要とされる能力を整理します。

信頼性設計の理解。冗長化、フェイルセーフ、縮退運転。止まらない仕組みの作り方です。

既存システムを読む力。古いコード、独自の仕組み。新しく作るより、理解することが求められる場面が多くあります。

制御と物理の知識。ソフトウェアだけでなく、設備の挙動を理解する必要があります。

慎重さ。速く作ることより、確実に動くことが評価されます。

この分野は、技術の入れ替わりが緩やかです。学んだ知識が長く使え、経験が蓄積しやすい領域だと言えます。

この領域の意味

最後に、位置づけを整理します。

需要が消えることはありません。社会が存続する限り、インフラは必要です。

一方、扱える人材は減っています。高齢化と、新規参入の少なさ。この需給の差が、この領域の価値を支えています。

新しい技術に触れる機会は限られます。この点を物足りなく感じる人には向きません。

逆に、長く使われるものを作りたい、社会の基盤を支えたいという動機がある人には適した領域です。

そして、この分野の経験は他業界でも評価されます。止められないシステムを扱った経験は、金融や医療でも通用します。

制御系と情報系の違い

この分野では、2つの系統を区別して考えます。

情報系(IT)。業務システム、事務処理、データ分析。一般的なシステムと同じ考え方です。

制御系(OT)。設備を直接動かす仕組み。求められる要件が大きく異なります。

制御系では、応答時間の確定性が重要です。平均が速いことより、最悪の場合でも一定時間内に応答することが求められます。

更新の頻度も違います。情報系が数年で入れ替わるのに対し、制御系は数十年使われます。

近年、この2つの接続が進んでいます。効率化のためですが、同時にセキュリティ上の課題も生じます。

この分野のキャリア

働く側の視点で整理します。

電力、鉄道、通信、ガス。いずれも事業者数が限られ、専門性が特定の企業に集中します。

転職の選択肢は限られますが、経験が評価される範囲は意外と広くなります。止められないシステムを扱った経験は、金融や医療でも通用します。

資格が有効な領域でもあります。電気、通信、施工に関する資格が実務と結びつきます。

年齢を重ねても需要が続くのが特徴です。技術の入れ替わりが緩やかで、経験が価値になります。

逆に、新しい技術に触れる機会は限られます。この点を理解したうえで選ぶ領域だと考えます。

参考文献
  1. 経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」

本文中の数値は各調査時点のものです。調査主体により定義や推計方法が異なるため、出典を確認のうえご参照ください。

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