内製化を進めるには。失敗する理由と、現実的な手順
内製化という言葉は幅広く使われますが、すべてを自社で抱えることが目的ではありません。この記事では、何を内側に持つべきかを整理します。
内製化とは何を指すか
内製化という言葉は、範囲が曖昧なまま使われがちです。まず整理します。
完全な内製。企画から開発、運用まで自社の社員が行う形。
一部の内製。要件定義と設計は自社、実装は外部という分担。
体制の内製。開発は外部人材だが、指揮と意思決定は自社が持つ形。
多くの企業が目指しているのは3つ目だと考えます。すべてを自社の社員で賄うことは、人材確保の面で現実的ではありません。
重要なのは、誰が判断するかです。作る人を全部抱えることが目的ではありません。
なぜ内製化が求められるのか
背景にある課題を整理します。
- 速度/外部への発注は、要件定義から契約まで時間がかかる
- 変更への対応/小さな修正のたびに見積もりと契約が必要になる
- 知見の蓄積/委託では、システムの理解が社内に残らない
- 費用/長期では、外部委託の累計が内製の人件費を上回る場合がある
- 事業との距離/作る人が事業を理解しているほど、判断が速い
3つ目が最も深刻です。担当者が替わり、委託先も替わると、なぜその仕様なのかを説明できる人がいなくなります。
日本ではIT人材の多くがベンダー側に所属する構造があり、この課題が生じやすくなっています。
内製化が失敗する理由
取り組んでも定着しない例には、共通点があります。
採用できない。採用市場は競争が激しく、事業会社が技術者を集めるのは容易ではありません。
採っても辞める。技術的に古い環境、裁量のない役割、評価されない仕組み。入社後の環境が整っていないと定着しません。
評価の仕組みがない。技術職を既存の等級に当てはめると、報酬水準が市場と乖離します。
判断できる人がいない。技術的な意思決定を担える人材がいないまま人数だけ増やしても機能しません。
目的が曖昧。費用削減が目的なら、多くの場合期待は外れます。
現実的な進め方
段階を追った手順を示します。
第一に、判断する立場を内側に置く。要件を定め、優先順位を決め、技術的な判断をする役割。ここが最初の一歩です。
第二に、小さく始める。基幹システムではなく、影響の小さい領域から。
第三に、環境を整える。技術的に妥当な選択ができる状態、学習の時間、適切な評価。
第四に、外部人材と組む。すべてを社員で揃える必要はありません。知見を社内に残す形での協働が有効です。
第五に、記録を残す。なぜその設計にしたか。これが蓄積されて初めて、内製の意味が出ます。
外部との組み合わせ方
全部を抱えない前提での設計を整理します。
中核と周辺を分ける。競争力に直結する部分は内側で、汎用的な部分は外部や既製品で。
期間で分ける。立ち上げ期は外部の力を借り、運用が安定したら内側に移す。
役割で分ける。設計と判断は内側、実装は外部。
いずれの形でも、仕様と判断の理由を社内に残すことが条件です。これがないと、委託と変わりません。
外部人材を長期で迎える形も選択肢です。雇用にこだわらず、継続的に関わる体制を作る考え方です。
何を目的にするか
最後に、判断の軸を整理します。
費用削減を目的にすると、多くの場合失敗します。採用費、人件費、教育。短期では外部委託より高くつきます。
目的にすべきは、速度と判断の質だと考えます。事業の変化に合わせて動ける状態。
すべての企業に必要なわけでもありません。システムが事業の差別化要因でないなら、既製品と委託で十分な場合があります。
問うべきは、そのシステムが競争力に直結するかどうかです。直結するなら内側に、しないなら外に出す。この切り分けが出発点になります。
採用の現実
内製化の最大の障害である採用について、率直に整理します。
事業会社は不利な立場から始まります。技術者から見て、開発を主業とする企業のほうが情報が多く、選ばれやすい構造があります。
提示できる条件で競う必要があります。報酬だけでなく、扱う技術、裁量、事業の内容。
事業会社ならではの魅力もあります。作ったものが自社の事業に直結する、利用者の反応が見える、長期で関われる。これを伝えられるかが分かれ目です。
最初の1人が最も難しいとされます。技術者が1人もいない組織に、最初に入る判断は容易ではありません。
この段階では、外部人材との協働から始めるのが現実的です。
定着させる条件
採用より難しいのが、定着です。
技術的な判断を任せる。すべて上位者の承認が必要な環境では、専門職としての意味がありません。
環境を古いままにしない。時代遅れの技術を使い続ける環境は、本人の市場価値を下げます。これが離職の理由になります。
評価の仕組み。既存の等級に当てはめると、報酬が市場水準と乖離します。専門職の等級が必要になる場合があります。
学習の時間。業務時間内に学べるかどうか。
孤立させない。1人だけの技術者は、相談相手がおらず定着しにくくなります。複数人での採用が望ましい理由です。
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