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10万ドル手数料は2つの連邦地裁で無効に。それでも仕事は米国外へ出ている

イーランサー・ジャパン株式会社

米国の就労ビザをめぐる動きは、日本の採用市場にとっても無関係ではありません。ただし、報じられている内容は制度の状態が数か月単位で変わっているため、日付を抜きに語ると不正確になります。この記事では、2026年10月27日時点で確認できる状態を時系列で整理したうえで、人材がどこへ向かっているのかを研究データで見ます。

10万ドル手数料の経緯

時系列で追います。

結論として、2026年10月27日時点で手数料は徴収されていません。ただし布告自体は延長されたままで、規則制定が適正に行われれば復活しうる状態です。

範囲についても誤解が多い点を押さえておきます。対象は海外から入国する新規申請者で、米国内にいる人の在留資格変更には適用されません。実際に支払われたのは約700人分のみと報じられています。

DHSは2026年8月、年間上限(cap)対象のH-1B申請に103,265ドルを課す規則を提案中です。提案段階であり施行されていません。これは海外在住者に限らず、新規H-1B取得者のほぼ全員が対象になり得ます。

抽選が賃金加重方式に変わった

手数料とは別に、抽選の仕組みが変わりました。こちらは実際に施行されています。

仕組みは、提示賃金に応じてエントリー数を変えるものです。労働省のOEWS賃金レベル(I〜IV)のうち、提示賃金が満たす最上位レベルに応じて口数が付与されます。

求人の最低要件は選抜段階では考慮されません。つまり高い賃金を提示するほど当たりやすい。エントリーレベルの採用が構造的に不利になります。

FY2027の実績では、登録期間は2026年3月4〜19日、選抜は3月31日までに完了。年間枠85,000件(一般65,000+修士号以上20,000)は登録期間中に充足し、第2回抽選は実施されませんでした。

登録件数・選抜件数の実数はUSCISが開示しておらず、確認できませんでした。

仕事が米国外へ出ている

ここからが、採用市場に効く部分です。規制が厳しくなると人材が国外に流れる、という議論には学術的な根拠があります。

2024年のペンシルベニア大学の研究によれば、H-1B却下1件につき、企業は海外で0.4〜0.9人を雇用する。主な行き先はインド、中国、カナダです。

実際の企業行動も報じられています。

構図としては、人を米国に呼べないなら、仕事を人のいる場所へ出す。エントリーレベルが約15%含まれている点も重要で、単に既存の業務を移管しているのではなく、現地で育てる前提の採用が始まっていることを示しています。

供給側の事情もあります。AI関連分野(コンピュータ・情報科学等)のフルタイム大学院生の約75〜80%が留学生と報じられています。ビザが制約になれば、米国内の供給そのものが細る構造です。

日本に流れてくるのか

ここは慎重に扱う必要があります。

報じられている行き先はインド、カナダ、UAE、中国です。日本が受け皿になっているという調査データは、今回の調査では見つかりませんでした。

日本側の統計を見ても、情報通信業の外国人労働者は97,924人、前年比+8.1%(厚生労働省、令和7年10月末)。全産業の+11.7%を下回っており、急激な流入が起きている様子はありません。

ただし、これは機会がないということではありません。条件を整理すると、日本が選ばれにくい理由は次のあたりです。

  1. 報酬。日本のITエンジニア給与は70カ国中31位、G7最下位(29,813ドル)とする民間調査がある
  2. 言語。開発自体に日本語は不要でも、仕様の議論や顧客折衝が日本語で行われる現場が多い
  3. 在留資格。IT分野には特定技能の枠がなく、技人国か高度専門職しかない。技人国の審査は実績で41〜51日
  4. 認知。そもそも選択肢として想起されていない

1と2はすぐには変えられませんが、3と4は企業側の運用で差がつきます。高度専門職なら在留審査は5日目途、在留期間は一律5年。手続きの速さと確実性は、報酬以外で提示できる数少ない条件です。

「H-1B規制により日本にチャンスが来ている」という主張は、現時点ではデータに基づく事実ではなく解釈です。本記事では、そのように分けて記載しています。

賃金加重がもたらす二次的な影響

抽選が賃金加重になったことの影響は、当選率だけにとどまりません。

  1. 提示賃金のインフレ。レベルIVなら4口、レベルIなら1口。採用したい企業は、当選確率のために賃金を上げる動機を持つ
  2. エントリーレベルの排除。求人の最低要件は選抜段階で考慮されない。新卒や経験の浅い層は、構造的に不利になる
  3. 職種による有利不利。同じ経験年数でも、OEWSの賃金レベルは職種によって異なる。AI・機械学習のように水準の高い職種が有利になる
  4. 中小企業の不利。高い賃金を提示できる企業ほど当たりやすい。資金力の差が、採用力の差に直結する

2番目は、大手テック6社がインドで採用している求人のうち約15%が経験3年未満のエントリーレベルという報道と符合します。若手を米国で採れないなら、現地で採って育てる。

FY2027では年間枠85,000件(一般65,000+修士号以上20,000)が登録期間中に充足し、第2回抽選は実施されませんでした。枠は埋まっている。需要が減ったわけではなく、配分のルールが変わったということです。

日本の採用市場から見ると、この変化は若手層に効いてくる可能性があります。経験の浅い段階で米国を目指していた層が、別の選択肢を探す。ただし前述のとおり、日本が選ばれているというデータはまだありません。

採用側が見ておくこと

  1. 制度の状態は日付とセットで確認する。H-1Bの手数料は2025年9月導入、2026年6月無効、同年9月延長、同月末に再び無効。半年前の情報は使えない
  2. 米国に出た人材が戻る可能性を見る。抽選が賃金加重になり、エントリーレベルが不利になった。若手の層で米国を諦める人が増えうる
  3. 競合はインドのGCC。日本企業が海外エンジニアを採ろうとするとき、比較対象は米国本社ではなく、現地の外資系拠点になることが多い
  4. 手続きの速さを売りにする。高度専門職の優先処理(在留審査5日目途)と在留期間5年の一律付与は、候補者にとって実質的な価値がある

出典

本記事は2026年10月27日時点で公開されている情報に基づいています。米国の制度は訴訟と規則制定の進行により変動します。USCISの登録件数・選抜件数の実数は確認できませんでした。

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