IT人材市場

外国人労働者257万人のうち、情報通信業は97,924人。伸び率は全産業より低い

イーランサー・ジャパン株式会社

外国人エンジニアの採用を考えるとき、最初に知っておくべきは市場の大きさと伸び方です。厚生労働省は毎年「外国人雇用状況」の届出状況をまとめており、産業別・国籍別・在留資格別の数字が公表されています。この記事では、情報通信業の数字を中心に、他産業との比較から見えてくる構造を整理します。

全体の数字

令和7年10月末時点のまとめ(令和8年1月30日公表)です。

参考までに、前年(令和6年10月末時点)は2,302,587人、事業所342,087所でした。1年で26.8万人増えています。

情報通信業は97,924人

ここで注目したいのは増加率です。全産業が+11.7%なのに対し、情報通信業は+8.1%。ITは、外国人労働者の伸びという点では全体平均を下回っている。

IT人材が不足しているという話と、この数字は噛み合いません。考えられる理由は次のようなものです。

  1. 在留資格の制約。技人国か高度専門職しか選択肢がなく、学歴または10年の実務経験が要る。間口が構造的に狭い
  2. 日本語要件の実態。開発そのものに日本語は必須でなくても、仕様の議論や顧客折衝が日本語で行われる現場が多い
  3. 報酬競争力。同じスキルなら、より高い報酬を提示する市場が他にある
  4. 採用側の経験不足。手続きと受け入れ体制の両方に初期コストがかかる

他産業と比べる

産業大分類別の外国人労働者数(令和7年10月末、全在留資格計)です。

製造業が63.5万人で突出しています。情報通信業の9.8万人は、建設業の半分以下。

この差の多くは、技能実習・特定技能という受け皿があるかどうかで説明できます。製造業・建設業・農業・介護には特定技能の枠があり、令和8年1月23日の閣議決定でも特定産業分野は19分野。そこに情報通信・ITは一切含まれていません。

2027年4月に始まる育成就労も17分野で、やはりIT系はありません。つまりITエンジニアの受け入れは、今後も技人国と高度専門職の2本に限られます。

国籍別の構造

令和7年10月末時点の国籍別です。

伸びているのはインドネシア、ミャンマー、ネパール、スリランカ。いずれも30%前後かそれ以上です。一方で上位のベトナム・中国・フィリピンは一桁の伸びにとどまります。

ただし、これは全産業の数字です。伸びの大きい国は技能実習・特定技能の比率が高い可能性があり、IT分野の構成とは一致しません。

産業別×国籍別のクロス集計(情報通信業の国籍内訳)は、公表資料の概要版では確認できませんでした。

在留資格別:専門的・技術的分野が+20.4%

専門的・技術的分野が+20.4%で、全体の+11.7%を大きく上回っています。日本の外国人労働者の構成は、専門職の比率が上がる方向に動いている。

ただし内訳を見ると、この伸びの主因は特定技能(+38.3%)です。技人国は+13.8%。専門職化は進んでいるものの、IT人材が中心になっているわけではありません。

参考として、入管庁の在留外国人数(令和8年6月末)では、技術・人文知識・国際業務は516,184人。在留外国人の総数は4,281,026人(前年末比+3.8%)で過去最高です。

韓国人の情報通信業

国別で、IT分野の実態が分かる数字があります。労働政策研究・研修機構(JILPT)が韓国労働研究院の調査をもとに整理したものです。

情報通信業の外国人97,924人のうち、韓国人が約1万人。おおよそ10人に1人です。全産業における韓国人の構成比が3.1%であることを考えると、韓国人はIT分野に偏って就労していると言えます。

背景には韓国側の送り出し支援もあります。海外就職支援事業「K-Move」では、東京・大阪・名古屋にセンターが設置されています。

「79万人不足」の正しい読み方

海外人材の必要性を説明するとき、ほぼ必ず引かれるのが「2030年に79万人不足」という数字です。ただし、この引用の仕方は原典を正確に伝えていません。

原典は経済産業省が委託した「IT人材需給に関する調査」(2019年3月公表)です。2030年のIT人材需給ギャップは、複数のシナリオで示されています。

生産性上昇率0.7%の場合

生産性上昇率2.4%の場合

つまり「79万人」は最も悲観的な高位シナリオの数値であり、生産性が2.4%伸びれば低位シナリオでは供給超過になります。

さらに重要なのは公表時期です。2019年3月公表で、生成AI普及前の推計。2026年の資料で「経産省によれば79万人不足」とだけ書くのは、原典の性質を正確に伝えているとは言えません。

提案書や社内資料で使うなら、シナリオ名と公表年を添えるのが誠実です。「2019年公表の推計における高位シナリオで78.7万人」と書けば、後から出典を問われても困りません。

これより新しい公的なIT人材の需給推計は、今回の調査では確認できませんでした。

この数字から何を読むか

  1. ITの受け入れは構造的に伸びにくい。特定技能・育成就労の枠がなく、技人国と高度専門職しかない。全産業+11.7%に対しIT+8.1%という差は、制度の設計から来ている
  2. だからこそ、採用できる企業は相対的に有利。競合が手続きを理由に手を出していない領域が残っている
  3. 国別の偏りは、分野ごとに違う。全産業ではベトナム・中国・フィリピンが上位だが、ITでは韓国の存在感が相対的に大きい
  4. 専門職の比率は上がっている。専門的・技術的分野が+20.4%。「外国人=単純労働」という前提は、統計上もう成り立たない

出典

本記事は2026年10月27日時点で公開されている情報に基づいています。産業別×国籍別のクロス集計は、公表資料の概要版では確認できませんでした。

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