エンジニア採用

定着率が「低い」は6.7%。辞める理由の半分は、帰国ではなく日本国内での転職

イーランサー・ジャパン株式会社

外国人エンジニアの採用をためらう理由として、よく挙がるのが「定着しないのではないか」です。ところが公的機関の調査を見ると、この通説は統計と食い違っています。そして実際に辞める場合も、理由の半分は帰国ではなく日本国内での転職でした。この記事では、定着をめぐる数字を整理し、何が実際の課題なのかを見ます。

定着率「低い」は6.7%

日本政策金融公庫 総合研究所の「中小企業等における外国人雇用に関するアンケート」です。調査時点は2024年9〜10月、回答3,948社(送付16,000社、回収率24.7%)。

定着率(日本人正社員との比較)

「同じか高い」が合計80.9%。「外国人は辞めやすい」という通説は、公的な調査データとは食い違っています。

退職の実態も聞かれています。

退職理由の最多が国内転職であるというのは、帰国ではなく、日本の労働市場での引き抜きが実態だということです。定着の問題は「日本に馴染めるか」ではなく、「自社が選ばれ続けるか」という普通の人材競争の問題に近い。

何が報酬差を作っているか

その人材競争の相手が誰なのかを示す数字があります。日本在住の外国籍エンジニアを対象とした調査(2025年9〜10月実施、回答約1,000人)です。

企業タイプ別の総年収中央値

全体の総年収中央値は950万円(n=887)。日本企業850万円に対し、日本拠点を持たない外資1,350万円は1.6倍です。

経験年数別の中央値も出ています。

前年から昇給した人は57%、減給は6%。

この構造で何が起きるかは明らかです。日本企業が育てた人材を、外資が1.5倍前後の条件で引き抜く。退職理由の51%が国内転職であることと、きれいに整合します。

この調査は民間の求人サイトによるオンライン調査で、自己選択バイアスがあります。回答者数も記事本文と集計サイトで989人と1,009人の食い違いがあります。傾向を見る参考値としてご覧ください。

本当の困りごとは、採用コストと手続き

同じ公的調査で、企業が感じている困りごとが聞かれています。

上位2つが採用コストと入管手続き。定着やコミュニケーションではありません。

入管手続きについては、2026年に状況が悪化した面があります。

コミュニケーションについては、実は問題視されていません。「とれている」と答えた企業が72.7%。日本語学習支援を実施している企業は47.1%です。

その他の数字も挙げておきます。

採用の満足度が30.7%、育成の満足度が14.5%というのは低い数字です。定着はしているが、採用も育成も満足できていない——これが実態に近いと読めます。

この調査は業種別の集計はありますが、職種別の集計はありません。IT職種に限定した数値は確認できませんでした。

働き方の前提が変わっている

定着を考えるうえで、働き方の前提も押さえておく必要があります。

日本在住の外国籍エンジニアのリモート方針(n=912)です。

リモートなしは10%。9割が何らかの形で柔軟な働き方をしています。

世界的にも同じ傾向です。米国の在宅勤務を毎月追跡している学術調査によれば、有給フルデーに占める在宅勤務の割合は2025年9月時点で約26%で、2023年頃から横ばいで安定しています。

オフィス稼働率も、2020年2月比で約35%減のまま頭打ちです(2,600棟超を対象とした計測)。オフィス回帰が進んでいるというより、ハイブリッドで高止まりしているというのがデータの示す姿です。

なお、よく引かれる「6割のCEOが完全オフィス回帰を予測」という数字は、2023年または2024年の調査のものです。2026年版の同じ調査では、オフィス回帰は人材課題の5番目に後退し、トップはスキルギャップ、2位はAIのリスキリングに置き換わっています。

採用コストが高いと感じる理由

困りごとの1位が「採用費用が想定より高い」(27.8%)でした。内訳を分解すると、日本人採用との差がどこにあるかが見えます。

このうち、企業側の運用で減らせるのは3番目と5番目です。

在留期間が長く出れば、更新の回数が減ります。1年を5回更新すると165,000円、5年で1回なら75,000円。高度専門職なら在留期間5年が一律で付与され、在留審査は5日以内が目途とされています。

また、所属機関のカテゴリーが上がれば提出書類が減ります。オンライン申請の利用申出が承認されていればカテゴリー2になるため、継続的に採用する予定があるなら先に申出を済ませておく価値があります。

つまり採用コストの一部は、制度の使い方を知っているかどうかで変わる。困りごとの1位と2位が「費用」と「手続き」で並んでいるのは、この2つが同じ問題の表と裏だからです。

定着のために実際にやること

データから逆算すると、打ち手は意外に普通です。

  1. 報酬の比較対象を、同業の外資に置く。競合は海外の企業ではなく、日本にいる外資系。日本企業850万円・外資1,150〜1,350万円という差が、引き抜きの原資になっている
  2. キャリアパスを明示する。経験年数別の中央値は10年で1,150万円、20年超で1,550万円。自社で同じ曲線を描けるかを示せるか
  3. 柔軟な働き方を維持する。リモートなしは10%しかいない。完全出社に戻すのは、採用市場から降りるのに近い
  4. 入管手続きを自社の強みにする。困りごとの2位が手続き。慣れている企業は、それだけで候補者にとっての価値になる。高度専門職なら在留審査5日目途、在留期間5年一律
  5. 育成の満足度を上げる。採用30.7%に対し育成14.5%。定着しているのに育成できていないなら、辞めるのは時間の問題になる

5つとも、日本人の採用でも言われることです。外国人だから特別な施策が要るわけではない——これが、データを並べたあとに残る結論です。

出典

本記事は2026年10月27日時点で公開されている情報に基づいています。民間調査にはサンプルの偏りがあります。日本政策金融公庫の調査は業種別の集計のみで、IT職種に限定した数値は確認できませんでした。

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