エンジニア採用

日本人の新卒が18万円、採用した外国人が13万5千円。それだけで不許可になる

イーランサー・ジャパン株式会社

在留資格の申請は、書類を揃えれば通るものではありません。審査されているのはその仕事が本当に専門職なのかという一点です。出入国在留管理庁はガイドラインの別紙として不許可事例を公表しており、そこには採用側が陥りやすい形がそのまま並んでいます。この記事では、公表されている事例をもとに、採用設計の段階で潰しておくべき論点を整理します。

公表されている不許可事例

入管庁のガイドライン別紙3(事例)から、IT・エンジニア関連のものを挙げます。

4つとも、申請書類の不備ではありません。仕事の設計そのものが要件を満たしていないという理由です。書類を直しても通らない種類の不許可です。

審査の着眼点は4つ

同資料から読み取れる審査の視点を整理します。

  1. 専攻科目と従事業務の関連性、業務の専門性
  2. 日本人と同等額以上の報酬
  3. 業務量が十分にあること
  4. 研修名目でも、実際には対象外業務(配膳・清掃等)に長期間従事する場合は不許可

3番目の「業務量」は、見落とされがちです。専門的な業務が含まれていても、それがフルタイムの仕事として成立する量があるかが見られます。事例②で、会計・労務管理が「業務量が十分と認められず」とされたのはこの観点です。

4番目も実務で起きやすい形です。「最初の半年は現場を覚えてもらう」という日本の採用でよくある育成方針が、在留資格の文脈では対象外業務への従事と評価されうる。なお、技人国で許容される実務研修の範囲は、ガイドラインの別紙1で定められています。

許可された事例の報酬水準

逆に、許可された事例も公表されています。IT系のものを報酬とあわせて挙げます。

並べると、月額24万〜35万円が中心帯です。不許可事例の13万5千円とは、はっきり差があります。

ただし金額そのものに基準があるわけではありません。要件は「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上」。同じ社内に比較対象の日本人がいれば、その水準が基準になります。事例①が不許可になったのは、13万5千円が低いからというより、同時期の日本人新卒18万円という社内の比較対象が存在したからです。

通勤手当・住宅手当等の実費弁償的給付は報酬に含まれません。基本給で比較される点に注意が必要です。

報酬要件を、どう確認するか

「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上」という要件は、一見単純ですが、実務では判断が割れます。確認すべき順序を整理します。

  1. 同じ職務の日本人が社内にいるか。いれば、その報酬が直接の比較対象になる。事例①で不許可になったのは、同時期に採用された新卒日本人が月額18万円だったため
  2. いない場合、自社の求人票はいくらか。同じ職務で募集している金額と乖離していないか
  3. 基本給で比較する。通勤手当・住宅手当等の実費弁償的給付は報酬に含まれない。諸手当を厚くして総額を合わせても、要件は満たさない
  4. 昇給の扱いを決める。初年度だけ同等で、その後の昇給ルールが日本人と違う構成は、更新時に問題になりうる

許可事例の報酬水準(月額約24万〜35万円)は参考になりますが、金額そのものに基準があるわけではない点は繰り返しておきます。社内に比較対象がいれば、その水準が基準になります。

逆に言えば、日本人の初任給を引き上げずに外国人だけ安く採ることはできない。これは制度上そうなっているので、コスト削減目的の採用は最初から成立しません。

採用設計の段階で潰しておく論点

事例から逆算すると、内定を出す前に決めておくべきことが見えてきます。

  1. 職務記述書を、専門性が読み取れる粒度で書く。「システム開発」では足りない。使用する言語、担当する工程、設計の範囲まで書く
  2. 社内の比較対象を確認する。同じ職務の日本人がいれば、その報酬が基準になる。いない場合も、求人票の提示水準と整合しているか
  3. フルタイムの業務量があることを説明できるようにする。週何時間を何に使うのかを、割合で示せると強い
  4. 研修期間の中身を書き出す。対象外業務に長期間従事する形になっていないか。別紙1の範囲に収まるか
  5. 専攻と業務の関連性を確認する。専修学校卒の場合は原則として相当程度の関連性が必要。大学卒より厳しく見られる

5つとも、採用を決めてからでは直せません。職務内容と報酬を設計する段階で織り込む必要があります。

許可された後の論点

入管庁は、素行・在留状況を理由とする不許可事例も別途公表しています。技人国に関係するものを挙げます。

事例9は、採用側にとって重要です。技人国は、所属する機関と職務内容に紐づいた資格です。退職すれば、その資格で滞在し続ける根拠が弱くなる。転職そのものは可能ですが、新しい職務が同じ要件を満たす必要があります。

あわせて、在留カード関係・所属機関に関する届出義務の履行も審査の考慮事項とされています。採用時だけでなく、在籍中の手続きが更新時に効いてくる構造です。

時間の読み方

不許可になった場合、やり直しには時間がかかります。入管庁が公表している処理期間の実績値(令和8年8月許可分)は次のとおりです。

標準処理期間の目安は2週間〜1か月とされていますが、実績はその1.5〜2倍です。不許可→設計の見直し→再申請となると、3〜4か月は動きません。

さらに2026年10月1日から、在留資格変更・在留期間更新の手数料が改定されました。在留期間更新は改定前の一律6,000円から、期間に応じて10,000円〜75,000円に。やり直しのコストも上がっています。

結論として、この分野は事前の設計に時間を使うほうが、結果として速い。公表されている不許可事例を読んでおくこと自体が、最も安価な対策です。

学歴要件を満たさない候補者の道

不許可事例の多くは業務内容と報酬の問題ですが、そもそも要件を満たせるかという段階でつまずくこともあります。IT人材には、学歴要件の代替ルートがあります。

入管庁と経済産業省商務情報政策局が公表している「外国人IT人材の在留資格と高度人材ポイント制について」は、技人国の学歴要件の代替として法務省告示で定めるIT関連試験の合格を認める旨を示しています。

IPAと相互認証のある国・地域として挙げられているのは次のとおりです。

通常の技人国では、学歴がなければ10年以上の実務経験が必要です。独学や専門学校以外のルートで実力を付けた候補者にとって、この10年は現実的でないことが多い。

試験合格が代替になるなら、経歴の形に関係なく要件を満たせる。採用候補を広げる意味でも、この制度を知っているかどうかで差が出ます。

なお、専修学校修了者の場合は「専門士」または「高度専門士」の称号が必要で、専攻科目と業務の関連性も原則として相当程度必要とされます(文部科学大臣の認定を受けた専修学校専門課程は柔軟に判断)。大学卒業者より厳しく見られる点は、書類を揃える前に確認しておくべきです。

出典

本記事は2026年10月27日時点で公開されている情報に基づいています。事例は入管庁が公表しているものの要約であり、個別の案件の可否を示すものではありません。実際の申請については行政書士等の専門家にご確認ください。

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