エンジニアの評価制度とは。何を測り、何を測らないか
エンジニアの評価は、他の職種より設計が難しくなります。測りやすい指標を使うと、行動が歪みます。この記事では、何を測るべきかを整理します。
なぜ難しいのか
エンジニアの評価は、他の職種より設計が難しくなります。理由を整理します。
成果が見えにくい。コードの行数は指標になりません。むしろ、少ない行数で解決するほうが優れています。
成果が遅れて現れる。良い設計の価値は、数年後の保守で分かります。
チームでの成果。個人の貢献を切り出しにくい構造があります。
見えない仕事がある。障害を未然に防いだ、後輩を助けた、技術的な負債を減らした。数字に現れません。
これらを無視して測りやすい指標を使うと、行動が歪みます。
使ってはいけない指標
測りやすいという理由で選ばれがちな、有害な指標を挙げます。
コードの行数。多く書くほど評価されるなら、冗長なコードが増えます。
作業時間。長く働くほど評価されるなら、効率化の動機が失われます。
対応した件数。簡単な案件を選ぶ動機が生まれます。
不具合の数。報告しない動機が働きます。品質が下がる方向に作用します。
指標が行動を変えることを、常に意識する必要があります。測ったものが増えるのではなく、測られたものに合わせて行動が変わります。
何を評価するか
実務的に機能する観点を整理します。
- 成果への貢献/担当した領域で、事業や利用者に何が起きたか
- 技術的な判断/設計の質、選択の妥当性。レビューで見える
- 周囲への影響/他のメンバーの生産性を上げたか。教育、仕組みの改善
- 難易度/担当した課題の複雑さ。簡単な仕事の量では測らない
- 継続的な改善/技術的な負債の返済、運用の効率化
3つ目が最も見落とされます。自分の成果ではなく、他人の成果を上げる貢献です。組織にとって価値が高いにもかかわらず、評価されにくい構造があります。
運用のしかた
制度より、運用のほうが結果を左右します。
評価する人が技術を理解しているか。理解していない人が評価すると、見える部分だけで判断されます。
複数の視点を入れる。直属の上司だけでなく、協働した相手からの情報も集めます。
基準を事前に示す。何をすれば評価されるかが分からない組織では、努力の方向が定まりません。
頻度を上げる。年1回では、記憶に残った直近の出来事に偏ります。
説明する。結果だけを伝えるのではなく、理由を説明します。納得できない評価は、離職の理由になります。
等級と役割の設計
評価と並んで重要なのが、進む道の設計です。
管理職以外の道があるか。技術を深める人が昇進できない組織では、優秀な技術者が管理職になるか、辞めるかを選ぶことになります。
専門職の等級を設ける企業が増えています。管理職と同等の報酬水準を設定する形です。
ただし、名ばかりの制度では機能しません。実際にその等級に到達する人がいるか、報酬が伴っているかが問われます。
また、行き来できるかも重要です。管理職から専門職へ戻れない設計では、選択に慎重になります。
この設計の有無が、採用と定着に直接影響します。
評価の目的
最後に、何のための評価かを確認します。
報酬を決めるためだけではありません。本人が次に何を伸ばすべきかを示す機能があります。
組織が何を重視するかを伝える手段でもあります。評価される行動が増え、されない行動が減ります。
したがって、評価の設計は組織の方向を定める行為です。
完璧な制度は存在しません。ただし、基準が示されており、説明があり、納得できる運用であれば、多くの不満は防げます。
評価と育成をつなぐ
評価は、報酬を決めるためだけの仕組みではありません。
本人が次に何を伸ばすかを示す機能があります。ここが機能していない組織では、成長の方向が定まりません。
有効なのは、期初に期待を明示することです。何ができれば次の等級かを、具体的に伝えます。
頻度も重要です。年1回では、修正の機会がありません。短い周期で確認するほうが、方向のずれを早く直せます。
そして、良い点も伝える。課題の指摘だけでは、何を続けるべきかが分かりません。
評価面談が形式的な儀式になっている組織は多く、改善の余地が大きい領域です。
納得感をどう作るか
制度が精緻でも、納得されなければ機能しません。
基準の事前開示。何をすれば評価されるかが分からない状態では、努力の方向が定まりません。
説明。結果だけでなく、なぜその評価かを伝えます。
一貫性。評価者によって基準が違うと、不信につながります。評価者の訓練が必要です。
異議を言える経路。納得できない場合に、意見を述べられる仕組み。
完璧な評価は存在しません。ただし、基準が示され、説明があり、一貫していれば、多くの不満は防げます。
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