複数国からエンジニアを集めて1つの案件を回す。越境での人材調達の実務
人材が国内で揃わないとき、複数の国から集めるという選択肢があります。ただし「海外から採る」と一言で言っても、英語で業務ができる人材がどれだけいるのか、どんな技術の人が集まりやすいのか、実際の規模感は見えにくいものです。この記事では、自社の登録データと実案件をもとに、越境での人材調達の実務を整理します。
どんなときに複数国から集めるのか
複数国から人を集めるのは、多くの場合1か国では必要な人数が揃わないときです。珍しい技術を使う案件や、短期間でまとまった人数が必要な案件で起こります。
もうひとつは、技術の分布が国ごとに偏っているときです。特定の基幹システムの経験者はある国に集中し、モバイル開発の層は別の国が厚い、といった偏りは実際に存在します。
逆に言えば、1か国で揃うなら1か国で揃えたほうが運用は楽です。複数国にまたがると、後述するとおり管理の手数が増えます。複数国化は目的ではなく、必要に迫られて取る手段です。
「英語で業務ができる人」は想像より限られる
越境でチームを組むとき、最初の制約になるのは技術力ではなく言語です。技術的に適任でも、業務上のやり取りが成立しなければ案件には入れません。
イーランサーの登録エンジニアのうち、英語で業務上のコミュニケーションが可能と確認できた人材は約522名です。これは登録履歴書と保有情報をもとに算出した概算値になります。
この数字の受け止め方には注意が必要です。「英語ができる」と自己申告する人はもっと多く、仕様の議論や障害時のやり取りまで英語で成立する水準となると、母数は一気に絞られます。
実際の参画時には、この概算からさらに英語での対応水準、技術スタック、実務経験、プロジェクト経験を個別に確認したうえで選定します。登録者数はあくまで母集団であって、投入可能な人数ではありません。
集まる技術には偏りがある
英語で業務ができると確認できた約522名について技術スタックを分析すると、企業向けシステムとWebサービス開発の技術に寄っていることが分かります。
- Java/24%。最も多い。基幹系・業務系の開発経験者が中心
- MySQL/23%。Webサービス側のデータベース
- Oracle/19%。企業の基幹システムで使われる
- JavaScript/16%。フロントエンド側
- C#/11%。業務アプリケーション、Windows環境
このほか、Spring/Spring Boot、React.js、Node.js、PostgreSQL、Android、C++、Pythonなどの経験を持つエンジニアも含まれます。
構成比から読み取れるのは、この層は「新しい技術のスタートアップ的な開発」よりも「企業システムの構築・刷新」に強いということです。基幹システムの刷新やデータ連携といった案件とは相性が良く、最先端のAI研究のような領域とは必ずしも一致しません。
調達を検討するときは、まず自社の案件がこの分布のどこに当たるかを確認するのが近道になります。分布から外れる要件ほど、調達には時間がかかります。
3か国から約60名を1つの案件に投入した例
実際の例を挙げます。日系大手自動車メーカー関連のプロジェクトにおいて、フィリピン・インドネシア・マレーシアの3か国から各国約20名ずつ、合計約60名規模のITフリーランス人材を連携・投入した案件です。
この規模を1か国で揃えるのは現実的ではありませんでした。3か国に分散させることで必要人数を確保し、同時に特定の国の供給状況に依存しない構成にしています。
この案件を通じて蓄積されたのは、人数そのものより運用の知見です。
- 海外のIT人材をどう発掘し、どの基準で選ぶか
- 日本のプロジェクトにどう配置し、受け入れ側とどう接続するか
- 国をまたいだ人材を、稼働中どう管理し続けるか
3番目が最も見落とされます。集めるところまでは設計できても、稼働開始後の管理を誰が担うかを決めていない体制は、途中で破綻します。
国をまたぐと何が増えるか
複数国にまたがる体制では、国内で完結する案件にはない論点が出てきます。
- 時差/3か国に分かれると、全員が同時に稼働している時間帯が短くなる。同期が必要な会議を減らす設計が要る
- 契約と支払い/国ごとに契約形態も送金の実務も異なる。人数が増えるほど事務の負荷が効いてくる
- 品質基準の共有/「完了」の定義が国や企業文化で揺れる。最初に基準を文書で揃えておかないと、後工程で差が出る
- 窓口の一本化/受け入れ側が各国と個別にやり取りすると破綻する。間に立つ役割を誰が担うかを決めておく
これらは人数に比例して増える負荷です。5名なら個別対応でしのげますが、60名規模になると仕組みがないと回りません。
自社で抱えるか、任せるか
越境での人材調達は、自社で直接行うこともできます。判断の分かれ目は、調達そのものより稼働後の運用を抱えられるかにあります。
自社で行う場合、各国の採用チャネル、契約形態、支払い実務をすべて自前で持つ必要があります。継続的に越境調達を行う前提なら、この投資は回収できます。
一方、案件単位で必要になるだけなら、仕組みを自前で持つ意味は薄くなります。案件が終われば使われない仕組みに、維持費だけがかかり続けるためです。
自社の越境案件が今後も続くのか、今回限りなのか。ここを先に決めると、どちらを取るべきかは自然に決まります。
- 英語で業務上のコミュニケーションが可能な登録者数、および技術スタックの構成比/イーランサー登録者データに基づく集計。登録履歴書および保有情報を基準とした概算値
- 3か国・約60名規模の人材投入事例/当社の案件実績
※ 登録者数・構成比は集計時点の概算値です。実際の参画時には、英語でのコミュニケーション水準、技術スタック、実務経験、プロジェクト経験を個別に確認したうえで人材を選定します。
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必要な人数を1か国で揃えられない場合でも、複数国から要件に合う人材を集めて投入する形で対応できます。要件の整理から、国ごとの供給可能性の確認までご相談ください。
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