海外IT人材

世界のITエンジニアは3,023万人、伸びは2.2%に減速。アジア各国の現在地

イーランサー・ジャパン株式会社

海外のIT人材を検討するとき、最初に当たるのが「各国に何人いて、いくらなのか」という問いです。ところがこの領域は引用に耐えるデータが驚くほど少ない。検索上位に出てくるのは、オフショア開発会社の自社ブログかアフィリエイトサイトがほとんどです。この記事では、公的統計・業界団体・国際機関のデータに絞って、確認できる範囲だけを並べます。確認できなかったことも明記します。

世界のITエンジニアは3,023万人

ILO統計をもとにした国際比較です(ヒューマンリソシアが毎年公表、114カ国、2026年1月)。

注目は世界全体の伸びが+6.1%から+2.2%へ落ちている点です。IT人材は増え続けるという前提が、少なくとも統計上は鈍化しています。

一方で日本は+6.9%と世界平均を上回り、154.0万人。前年版では144.0万人でしたから、1年で10万人増えた計算です。

データ出典はILOデータベース(情報通信業就業者のうちISCO「専門職」「技師・准専門職」)。日本は総務省「労働力調査」、中国は国家統計局ベースの推計。公表しているのは民間の人材サービス会社です。韓国・ベトナム・インドネシアの人数は公表資料に記載がなく、確認できませんでした。

給与:日本は70カ国中31位

同じ調査の給与編(70カ国、2026年2月)です。

もう1つ、産業内の相対水準を示す数字があります。情報通信業の給与が全産業平均に対して何%か。

インドでは、ITの仕事に就くと平均の2.2倍の賃金が得られる。日本は1.3倍です。国内でITを選ぶインセンティブの強さが、国によって大きく違うということです。

この差は採用側にも効きます。日本の提示額が現地水準より高くても、本人から見れば「自国でITを選んだ場合の相対的な得」を手放すことになる。金額の比較だけでは動機を説明できません。

データ出典はPayscale「Software Engineer」(検索日2025年10月22日)+IMF為替レート。日本は厚労省「賃金構造基本統計調査」。韓国・ベトナム・フィリピン・インドネシアの国別年収額は公表資料に記載がなく、確認できませんでした。

インド:収入+6.1%に対し、人員は+2.3%

インドIT業界団体NASSCOMの年次レビュー(2026年2月24日発表)です。同国IT産業の事実上の標準統計です。

ここが今年の論点です。収入は+6.1%、人員は+2.3%。人を増やさずに売上を伸ばす構造に変わりつつある。

人件費の動きも、慎重です。

「インドは人件費が安い」という前提は、現地通貨ベースで5年間4割超増という数字と年9%の昇給が続く状況の前では、そのままでは成り立ちません。

インドのソフトウェアエンジニアの絶対額年収について、信頼できる一次情報や大手調査会社の公開データは確認できませんでした。

ベトナム:56万人、年6万人が卒業

経験レベルの構成が示唆的です。Fresher+Juniorで46%、Senior以上は24%。層としては厚いが、上位層は限られる。

半導体エンジニア5万人という政府目標も注目に値します。製造装置ソフトや工場システムの領域で、今後の供給元になりうるということです。

これらの数値はFPT Softwareの資料(2026年2月)によるもので、ベンダー発表です。同資料はTopDev、ベトナム統計総局、情報通信省、HSBC、世界銀行、Gartner等を引用元として明記しています。ベトナムのITエンジニア給与について、政府統計や大手調査会社の公開データは確認できませんでした。

フィリピン:2028年目標を下方修正した

IT-BPM業界団体IBPAPの統計です。2026年の最大のニュースは、ロードマップ目標の大幅下方修正でした。

雇用目標が250万人から、良いシナリオでも214万人へ。下振れすれば185万人で、2025年実績の190万人を下回ります。

下方修正の理由として挙げられているのは、AIに加えて買い手行動の変化、国際競争、政策、人材層の厚み、インフラ品質、ビジネス環境。AI単独が原因とはされていません。

一方で、世界のITエンジニア数ではフィリピンが前年比+24.2%で伸び率3位。IT-BPM全体(BPO含む)の伸び悩みと、エンジニア職の伸びは別の動きをしている可能性があります。

インドネシア:600万人不足という政府見解

これは通信デジタル省(Komdigi)のNezar Patria副大臣による2026年8月10日付の書面声明で、政府高官の公式発言です。

日本側の統計と重ねると、動きが見えます。厚生労働省の集計(令和7年10月末)で、インドネシア国籍の労働者は228,118人、前年比+34.6%。国籍別では8.9%で5位です。

ただしこれは全産業の数字で、技能実習・特定技能の比率が高い可能性があります。IT分野に限った内訳は公表されていません。

インドネシアの現在のデジタル人材総数は確認できませんでした。

日本から見た位置関係

各国の数字を、日本の採用市場に引き寄せて整理します。厚生労働省の集計(令和7年10月末)による国籍別の外国人労働者数と伸び率です。

各国の国内市場の状況と重ねると、動きの意味が見えます。

  1. インド:収入+6.1%に対し人員+2.3%。国内のIT産業が人を増やさない方向に入っている。一方で情報通信業の給与は全産業平均の220.3%で、国内でITを選ぶ魅力は大きい。日本に来る動機は作りにくい
  2. ベトナム:56万人超、年6万人が卒業、経験レベルはFresher+Juniorで46%。層は厚いが上位層は限られる。日本での在留者は国籍別1位
  3. フィリピン:IT-BPM全体は2028年目標を下方修正。一方でエンジニア数は前年比+24.2%で伸び率3位。BPOとエンジニアで動きが分かれている
  4. インドネシア:政府が600万人不足と公表。日本での労働者も+34.6%と伸びが大きい
  5. 韓国:日本で就労する韓国人は75,003人で、うち情報通信業10,048人(13.4%)。全産業での構成比3.1%に対し、IT分野では存在感が大きい

国を選ぶときの軸は、人数の多さではありません。その国の国内市場でITを選んだ場合の相対的な待遇と、日本語・時差・制度の距離の組み合わせです。

インドのように国内でITが優遇されている国からは来にくく、韓国のように日本語の学習基盤と送り出しの仕組みがある国からは来やすい。数字を並べると、その差がはっきりします。

この分野でデータを扱うときの注意

調べてみて分かったのは、引用に耐えるデータが極端に少ないということです。実務でこの領域を扱うときの注意点を挙げます。

  1. 「オフショア単価相場」は営業資料。日本語検索で出てくる各国の単価表は、ほぼすべてオフショア開発会社の自社ブログ。第三者検証がない
  2. 業界団体の統計は自己申告。NASSCOMもIBPAPも業界団体で、会員企業の報告をもとにしている。事実上の標準統計ではあるが、公的統計ではない
  3. 人数と給与で、信頼できる出典が違う。人数はILOベースの推計が比較的揃うが、給与は国別の公開データがほとんどない
  4. 公的な比較データはJETROにある。投資関連コスト比較調査で国・都市別の職種別賃金が公表されている。ただし数値はExcelファイル内にあり、引用するには直接ダウンロードが必要

提案書や社内資料で各国の単価を比較するときは、出典の性質まで書くことをお勧めします。後から出典を問われたときに、営業資料しか根拠がないという事態を避けられます。

出典

本記事は2026年10月27日時点で公開されている情報に基づいています。民間調査・業界団体統計・ベンダー発表が含まれるため、本文中にその旨を明記しています。確認できなかった項目も本文に記載しました。

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