アジャイルとウォーターフォールの違い。選び方と契約の関係
この2つは対立するものではなく、前提の違いから生じた別の方式です。この記事では、どう選ぶべきかを契約との関係も含めて整理します。
2つの進め方の違い
両者は対立するものではなく、前提の違いから生じた別の方式です。
ウォーターフォール。要件、設計、実装、試験を順に進めます。先に全体を決めてから作る方式です。
アジャイル。短い期間で動くものを作り、確認しながら進めます。作りながら決めていく方式です。
違いの本質は、要件が変わる前提かどうかです。
変わらない前提なら、先に決めきるほうが効率的です。変わる前提なら、早く作って確認するほうが無駄が減ります。
どちらが適するか
案件の性質で選ぶべきです。判断の材料を整理します。
- ウォーターフォールが適する/要件が明確、規制がある、関係者が多い、契約で成果物を定める
- アジャイルが適する/要件が変わりやすい、利用者の反応を見たい、内製で進める、短期で価値を出したい
日本で前者が多い理由は、契約構造にあります。外部に委託する場合、何を作るかを事前に確定しないと契約できません。
内製なら、後者を選びやすくなります。仕様の変更が契約の変更を伴わないためです。
金融や公共では、規制と検証の要求から前者が選ばれる場面が多くなります。
よくある誤解
この議論には、いくつかの誤解が伴います。
「アジャイルは設計しない」。誤りです。設計の単位が小さく、頻度が高いだけです。
「アジャイルは文書を作らない」。これも誤りです。作る量が少ないだけで、決めたことは記録されます。
「アジャイルなら速い」。作る速度が上がるわけではありません。無駄なものを作らずに済む可能性が高まるという効果です。
「ウォーターフォールは古い」。案件の性質によっては、いまも最適な選択です。
方式を選ぶこと自体が目的化すると、判断を誤ります。
実際は組み合わせになる
実務では、純粋にどちらか一方ということは稀です。
全体はウォーターフォール、一部をアジャイルという構成があります。基盤は先に固め、画面や機能は反復して作る形です。
要件定義だけ反復する方法もあります。試作を作りながら要件を固め、その後は順に進めます。
重要なのは、なぜその方式を選ぶのかを説明できることです。前例だから、流行だからという理由では、合わない案件に適用してしまいます。
そして、途中で方式を変えるのは困難です。契約、体制、評価の仕組みが方式に紐づいているためです。
契約との関係
方式の選択は、契約形態と不可分です。
請負契約は、完成を約束する形です。何を作るかが確定していないと成立しにくく、ウォーターフォールと相性があります。
準委任契約は、作業に対して対価を払う形です。完成の義務を負わないため、要件が変わる前提の進め方に適します。
この対応を無視すると、問題が生じます。請負契約でアジャイルを進めると、変更のたびに契約の議論になります。
発注側にとっては、準委任のほうが柔軟ですが、費用の上限が読みにくくなります。
方式と契約をセットで設計することが、実務上の要点です。
選び方の指針
最後に、判断の指針を整理します。
要件が確定しているかを最初に問います。確定しているなら、先に決めきる方式で構いません。
確定していないなら、確定させてから始めるか、反復する方式を選ぶかの判断になります。
そして、体制が対応できるかを確認します。反復型は、発注側にも継続的な関与が求められます。丸投げしたい発注者とは相性が悪くなります。
方式の優劣ではなく、条件との適合で選ぶという姿勢が、実務では有効だと考えます。
実践での注意点
どちらの方式でも、共通して問題になる点があります。
形だけの導入。会議の名前を変えただけ、期間を区切っただけ。本質は、決め方と進め方の変更にあります。
発注側の関与。反復型では、継続的な判断が求められます。丸投げしたい発注者とは成立しません。
記録の欠如。方式にかかわらず、決めた理由が残っていない設計は、数年後に誰も触れなくなります。
完成の定義。何をもって終わりとするか。合意していないと、検収で揉めます。
方式を選ぶことより、これらを整えるほうが結果に効きます。
体制への影響
方式の選択は、チームの構成にも関わります。
ウォーターフォールでは、工程ごとに担当が分かれることが多くなります。設計者、実装者、試験者。専門化が進みます。
アジャイルでは、1人が幅広く担う前提になります。設計から実装、試験までを通せる人材が求められます。
この違いは、採用と育成にも影響します。細分化された役割で採用してきた組織が、急に反復型へ移行するのは困難です。
また、評価の仕組みも異なります。個人の担当範囲が明確な方式と、チームの成果を重視する方式では、測り方が変わります。
方式だけを変えて、体制と評価を変えないと機能しません。
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