導入・選定

S/4HANA移行の3方式を比較する。グリーン・ブラウン・ブルーフィールドの選び分け

イーランサー・ジャパン株式会社 約4分

S/4HANAへの移行方式は3つあります。どれを選ぶかで、期間もコストも、必要な人材の経験も変わります。「とりあえず今の環境を変換すればいい」と考えて進めると、想定外の作業が後から積み上がることがあります。この記事では、3方式の違いと、どう選び分けるかを整理します。

なぜ方式の選択が重要なのか

SAP ERP 6.0(ECC 6.0)の標準保守は2027年12月31日で終了します。拡張パッケージの条件を満たせば追加費用で2030年末まで延長できますが、機能拡張は行われません。

この期限に向けて移行プロジェクトが集中していますが、方式の選択は「どう移すか」ではなく「この機会に何を変えるか」という経営判断です。長年かけて作り込んできた業務プロセスを維持するのか、標準に合わせて作り直すのか。ここが分かれ目になります。

技術的な作業量の話に見えて、実際には社内の合意形成の難易度が方式を決めることが少なくありません。

グリーンフィールド(新規導入)

既存システムを引き継がず、S/4HANAを一から構築する方式です。

前提となるのが「Fit to Standard」の考え方です。業務プロセスをシステムの標準機能に合わせ、独自の作り込みを最小限にします。

向いている場面

難しさ

業務部門との合意形成が最大の関門です。「今のやり方を変える」という決定を、現場の納得を得ながら進める必要があります。 技術以前の問題として、ここで止まるプロジェクトが少なくありません。

また、既存データの移行範囲を決める作業も発生します。何を持っていき、何を捨てるか。この判断には業務知識が要ります。

ブラウンフィールド(変換)

既存のECC環境を変換してS/4HANAへ移す方式です。設定、カスタマイズ、履歴データをそのまま保持できます。

向いている場面

難しさ

既存アドオンの棚卸しと改修が発生します。S/4HANAでは動かない、あるいは動作が変わる部分を洗い出し、一つずつ対応する必要があります。

長年運用してきた環境ほど、誰も内容を把握していないアドオンが残っていることがあります。「使われているかどうかも分からない」ものの扱いを決める作業が、想定以上の工数になりがちです。

また、この方式では既存の課題も一緒に引き継ぎます。使いにくい部分、非効率な運用がそのまま残ります。

ブルーフィールド(選択的移行)

S/4HANAへ移行したうえで、必要なデータのみを選択的に引き継ぐ方式です。グリーンとブラウンの中間的な位置づけになります。

向いている場面

難しさ

データ移行の設計難易度が最も高い方式です。何を持っていくかを決めるだけでなく、移行後に整合性が保たれるかを検証する必要があります。

会計データを途中から引き継ぐ場合、期首残高の扱い、締めのタイミング、監査対応をどうするか。技術と会計実務の両方が分かる人材が必要になります。

3方式の比較

方式業務プロセス既存データ主な負荷
グリーンフィールド標準に合わせて再構築必要最小限を移行業務部門との合意形成
ブラウンフィールド現状を維持そのまま保持アドオンの棚卸しと改修
ブルーフィールド部分的に見直し選択して移行データ移行の設計と検証

← 横にスクロールしてご覧いただけます →

選び方の判断軸

次の順で考えると整理しやすくなります。

正解は企業ごとに違います。 同じ業界・同じ規模でも、作り込みの度合いと社内の推進体制によって適切な選択は変わります。

なお、S/4HANAはクラウドでの提供形態も広がっており、「RISE with SAP」「GROW with SAP」といった選択肢もあります。方式の選択とあわせて、オンプレミスかクラウドかも判断することになります。

方式ごとに必要な人材が違う

見落とされがちですが、選ぶ方式によって求める経験が変わります。

2027年に向けて移行プロジェクトが集中しているため、いずれのタイプも獲得競争が起きています。 社内で確保しきれない場合、上流工程だけ外部人材に依頼し、実装以降は社内で進めるという組み合わせも取られます。

CONSULTATION

S/4HANA移行のご相談

イーランサーは、SAP/S4HANA領域の即戦力人材をご紹介しています。構想策定やFit&Gap分析といった上流工程から、実装・移行・稼働後の運用まで、必要な工程に合わせてご提案します。グループ全体で41万人のITエンジニア・ITコンサルタントが登録し、26年間にわたり蓄積したマッチングデータをもとにご紹介しています。

ご要件をいただいてから最短即日で候補者をご提案します。ご要件の内容により前後します。

法人向けサービスを見る