採用・組織

IT業界の多重下請け構造。生まれる理由と、双方の選択肢

イーランサー・ジャパン株式会社

多重下請け構造は批判されがちですが、成立するには理由があります。この記事では、構造の背景と、発注側・働く側それぞれの選択肢を整理します。

何が下請け構造を作るか

この構造は、日本のIT業界に固有のものではありませんが、顕著に見られます。

要因は、ユーザー企業に技術者が少ないことです。開発を外部に委託する前提があるため、受託の市場が大きくなります。

大規模案件では、1社で人員を揃えられません。元請けが受注し、複数の企業に分配します。

需要の変動も要因です。常に案件があるとは限らないため、自社で全人員を抱えるのは危険です。

これらは合理的な理由であり、構造そのものが誤りとは言えません。

問題は、層が深くなりすぎることと、責任と情報が不透明になることです。

何が問題なのか

具体的な弊害を整理します。

単価の低下。各層で利益が抜かれ、末端の報酬が下がります。同じ作業でも、位置によって差が生じます。

責任の不明確化。問題が起きたとき、誰が判断するかが曖昧になります。

情報の劣化。要件が層を経るたびに、意図が失われます。伝言が繰り返されることで、最初の目的が見えなくなります。

経験の偏り。末端では実装のみを担当し、設計や要件定義に関われません。

技術者の意欲。全体が見えない状態で作業だけを続けると、意味を感じにくくなります。

発注側から見た費用

この構造は、発注する側にも影響します。

中間マージンの分だけ、費用が上がります。同じ人材でも、層が深いほど発注額と技術者の報酬の差が広がります。

意思疎通の遅延。直接話せない相手と仕事をすることになり、確認に時間がかかります。

品質の管理が難しい。誰が作業しているかが把握できない場合があります。

ただし、利点もあります。元請けが全体を管理し、人員を確保する責任を負います。発注側の管理負担は減ります。

どちらを取るかは、社内の体制次第です。管理できる人材がいなければ、元請けに任せるほうが安全です。

構造を浅くする方法

発注側が取れる選択肢を整理します。

1つ目は費用面で有利ですが、管理の負担が増えます。要件を定め、進捗を管理し、品質を確認する。これができる人材が社内に必要です。

3つ目は、すぐに実行できる対策です。確認するだけで、透明性が上がります。

働く側の選択

この構造の中で、個人が取れる行動を整理します。

商流の上へ移る。元請けに近い企業、あるいはユーザー企業へ。関われる工程と単価の両方が変わります。

直接契約に移行する。フリーランスとして、中間を経ずに受注する。営業の負担は増えます。

自分の単価を知る。発注額と自分の報酬の差を把握します。開示されない場合もありますが、聞く価値はあります。

案件の質を優先する。単価より、どの工程に関われるか。数年後の市場価値に直結します。

この構造を批判するだけでは、状況は変わりません。個別の選択の積み重ねが、結果を分けます。

構造は変わりつつある

最後に、変化の方向を整理します。

内製化の動きが続いています。ユーザー企業が自社で技術者を雇う流れです。

フリーランスの増加。企業を介さない直接契約が広がっています。

クラウドとSaaS。作らずに使う選択肢が増え、受託開発の対象が縮小しています。

生成AIの影響。定型的な実装が自動化されれば、人数を投入する形の価値は下がります。

いずれも、層を浅くする方向に働きます。ただし、変化は緩やかです。この構造が数年で消えることはないと考えるのが現実的です。

他国との比較

この構造が日本に顕著な理由を、比較から整理します。

欧米ではユーザー企業に技術者が多く在籍します。開発を外部に委託する割合が相対的に低く、受託の市場も小さくなります。

日本ではベンダー側に人材が集中しています。この構造が、多層の商流を生む土台になっています。

ただし、海外にも下請け構造は存在します。大規模なシステム開発では、複数の企業が関わるのが一般的です。

違いは深さと透明性にあると考えられます。何次請けまで発生するか、誰が作業しているかが把握できるか。

内製化が進めば、この構造は変わります。ただし、人材不足が制約になります。

今日から確認できること

実務的に取れる行動を整理します。

発注する側。契約時に商流を確認する。再委託の可否と範囲を定める。確認するだけで透明性が上がります。

働く側。自分の単価を把握する。開示されない場合もありますが、聞く価値はあります。

案件に入る前に、誰が元請けかを確認する。商流の位置は、関われる範囲に影響します。

直接契約の可能性を探る。常駐先との関係が良好なら、選択肢になる場合があります。

構造を批判するだけでは変わりません。個別の確認と選択の積み重ねが、状況を動かします。

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