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国外で払っても源泉徴収は免れない。海外のエンジニアに発注するときの税務3点

イーランサー・ジャパン株式会社

海外のエンジニアに業務委託で発注する——契約と支払いの話として進みがちですが、税務の確認を飛ばすと、あとから源泉徴収漏れが残ります。しかも「国外に送金しているから関係ない」は通用しません。この記事では、国税庁が公表している範囲で、押さえるべき3点——課税の構造、源泉徴収の税率と範囲、租税条約の届出——を整理します。

課税の基本構造

非居住者・外国法人に対する課税の範囲は国内源泉所得に限られます。課税方法は3つの要素で決まります。

  1. 国内源泉所得の種類
  2. 国内に恒久的施設(PE)を有するか
  3. その所得がPEに帰せられるか

組み合わせによる扱いです。

根拠条文は所法2、5、7、161、164、169、178です。

国内源泉所得の範囲

国税庁は国内源泉所得を15項目で整理しています。エンジニアへの発注に関係するのは主に2つです。

条文の構造上、国内源泉所得は「国内において行う」役務提供に紐づいています。したがって「海外在住のエンジニアが海外で作業を完結する業務委託の対価は国内源泉所得に該当せず、源泉徴収不要」という整理が一般に行われます。

ただし、この結論をその文言で明示した国税庁のタックスアンサーや質疑応答事例は、今回の調査では確認できませんでした。本記事では条文の整理を示すにとどめます。実際の判断は税理士にご確認ください。

逆に、源泉徴収が必要とされた公表事例もあります。国税庁の質疑応答事例「国外で採用した非居住者に国外で支払う契約金」では、内国法人A社が英国居住の技術者Bに英国支店から契約金3万ドルを支払う事案について、契約金は役務提供を約することの対価として国内源泉所得に該当し、支払者が国内に事務所等を有する場合は支払時に源泉徴収が必要と回答しています。納付期限は支払月の翌月末日。関係法令は所得税法第161条第1項第12号イ、第212条第2項です。

税率と「国外払いのみなし国内払い」

ここが最も誤解されやすい部分です。

2番目が決定的です。オフショア送金にすれば免れる、ということはありません。支払者が日本に事務所を持っている限り、国外払いでも国内払いとみなされます。

20.42%という税率も、報酬設計に直接響きます。月50万円の委託費であれば、源泉徴収が必要な場合は約10.2万円を差し引いて支払うことになる。契約時に「手取りいくら」を前提に話していると、あとで揉めます。

なお、非居住者等への支払については支払調書の提出義務もあります。翌年1月31日まで。その年中の支払金額が50万円以下の場合は提出不要です。

恒久的施設(PE)の3類型

国税庁はPEを3類型で整理しています。

  1. 事業の拠点型:事業の管理を行う場所、支店、事務所、工場、作業場、鉱山等の天然資源採取場所、その他事業を行う一定の場所
  2. 長期建設工事等型:建設・据付けの工事またはその指揮監督の役務を1年を超えて行う場所。1年以内にするために契約を分割した場合は合計期間(重複部分を除く)で判定
  3. 契約締結代理人等型:国内に置く代理人等で、事業に関して反復して契約を締結する権限を持つ者、または契約締結のために反復して主要な役割を果たす者。独立代理人は除かれるが、主として特殊の関係にある者のために行動する場合は除外されない

準備的・補助的な性格の保管・展示・引渡しのためだけの施設は、1・2に含まれません(除外規定)。

最も重要なのは判定の考え方です。国税庁は「形式的に行うのではなく機能的な側面を重視して判定することになります」と明記しています。

つまり、契約書の文言ではなく実態で判断される。海外の委託先が日本向けの営業や契約締結に関与しているなら、3番目の類型に該当する可能性が出てきます。

また、租税条約に国内法と異なる定めがある場合は条約上のPEが適用されます。PEの定義は平成30年度税制改正で改正され、令和元年分以後に適用されています。

租税条約の届出は、最初の支払日の前日まで

租税条約に基づいて源泉所得税・復興特別所得税の軽減または免除を受けるには、「租税条約に関する届出書」の提出が必要です。

「最初の支払を受ける日の前日まで」という期限が、実務で最もつまずく点です。契約書に署名して、最初の請求書が来てから税務の確認を始めると、もう間に合いません。

遅れた場合の救済もあります。届出書と「還付請求書(様式11)」を支払者経由で所轄税務署長に提出し、条約上の税率との差額の還付を請求できます。

手間と時間を考えれば、最初の支払前に出しておくのが圧倒的に安い。発注の意思決定と同時に動かすべき手続きです。

業務委託と雇用、どちらが軽いか

税務の論点を踏まえたうえで、契約形態の選択を整理します。

税務の観点だけで言えば、業務委託が最も軽いのは確かです。雇用主負担がなく、EOR手数料もかからない。

ただし代償があります。指揮命令ができない。日々の進捗管理、作業指示、勤務時間の指定——これらを行えば、形式が業務委託でも実態は雇用と判断されうる構造になります。

実務で最も起きやすい事故が、まさにこれです。業務委託として契約した相手に、チャットで日々の指示を出し、定例に出席させ、作業時間を管理する。現場は悪気なくやります。

対策は単純で、契約形態ごとにできること・できないことを現場に周知することです。契約書を結んだ人と、日々やり取りする人が違う組織ほど、ここが抜けます。

発注前に確認する順番

  1. 役務がどこで行われるかを確定する。完全に国外で完結するのか、日本への出張や常駐が含まれるのか
  2. 相手の居住性を確認する。非居住者か、外国法人か、日本に拠点があるか
  3. PEに該当しうる行為がないかを見る。とくに契約締結への関与。実態で判断される
  4. 租税条約の有無と内容を確認する。軽減・免除があるなら、最初の支払日の前日までに届出
  5. 源泉徴収の要否と税率を確定してから、報酬額を決める。20.42%は、総額と手取りの差として大きい
  6. 支払調書の提出を忘れない。翌年1月31日まで。50万円以下は不要

1から6まで、どれも発注してからでは順番が狂います。とくに4は、相手に書類を用意してもらう必要があるため、契約交渉の段階で伝えておく必要があります。

なお、在留資格の観点では、技人国の契約に委任・委託・嘱託が含まれる一方で、「特定の機関との継続的なもの」である必要があります。日本に呼ぶ場合は、この要件も併せて確認が必要です。

出典

本記事は2026年10月27日時点で公開されている情報に基づいています。税務の判断は個別の事実関係によって変わります。実際の取扱いについては税理士または所轄税務署にご確認ください。

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