システム監視と障害対応の基本。何を測り、どう動くか
監視は設定して終わりではなく、障害対応は起きてから考えるものではありません。この記事では、何を測り、起きたときにどう動くのかを整理します。
監視は何のためか
監視の目的は、問題に気づくことです。当たり前に見えますが、実務では目的が曖昧なまま設定されている例が多くあります。
気づくべきは、利用者に影響が出ている状態です。サーバーの数値が高いことそのものではありません。
この区別が重要です。CPU使用率が90%でも、応答が正常なら問題ではありません。逆に、使用率が低くても、利用者が使えなければ障害です。
したがって、まず「利用者から見て正常か」を測る指標を置くべきです。機器の状態は、その次に来ます。
何を監視するか
測る対象を、層に分けて整理します。
- 利用者視点/画面が開くか、処理が成功するか、応答時間
- アプリケーション/エラーの発生数、処理の遅延、待ち行列の長さ
- 基盤/CPU、メモリ、ディスク、ネットワーク
- 外部依存/連携している他社サービスの状態
- 費用/クラウドの使用量。予算超過も一種の異常
優先順位は上からです。基盤の監視だけを設定している現場は多くありますが、それだけでは利用者の困りごとに気づけません。
5つ目は見落とされがちです。クラウドでは、設定の誤りが高額な請求につながります。
通知の設計
監視の失敗で最も多いのが、通知の出しすぎです。
大量の通知は、無視されるようになります。本当に重要な通知が埋もれ、監視の意味がなくなります。
設計の原則は、人が行動すべきものだけを通知することです。見るだけで何もしない通知は、通知にすべきではありません。
段階を分けるのが有効です。即座に対応が必要なもの、翌営業日でよいもの、記録だけで足りるもの。
また、閾値の設定には根拠が要ります。「なんとなく80%」ではなく、その値を超えると何が起きるかを踏まえて決めます。
障害時の動き方
実際に障害が起きたときの手順を整理します。
①影響の把握。誰が、何を、どの程度できないのか。原因より先に、影響範囲を確認します。
②連絡。関係者への共有と、必要なら利用者への告知。原因が分からなくても、起きていることは伝えます。
③復旧を優先。原因の究明より、まず使える状態に戻すことを優先します。切り戻し、再起動、切り離し。
④記録。時刻、事象、対応を残します。後の振り返りに必要です。
⑤原因の究明と再発防止。復旧後に行います。
③と⑤を混同すると、復旧が遅れます。原因を調べながら止まったままにするのは、多くの場合誤りです。
振り返りの記録
障害後の振り返りは、組織の資産になります。
記録すべきは、時系列、影響、原因、対応、再発防止策です。
個人の責任を追及しないのが原則です。誰が操作を誤ったかではなく、なぜその操作が可能だったかを問います。責める文化では、事実が出てこなくなります。
再発防止策は、具体的で実行可能なものにします。「注意する」は対策ではありません。仕組みで防ぐか、検知できるようにするか。
そして、記録を読み返せる場所に置くことです。書いたきり誰も見ない記録は、学習になりません。
起きる前の準備
障害対応の質は、事前の準備で決まります。
連絡先と役割。誰に連絡し、誰が判断するか。深夜や休日も含めて決めておきます。
切り戻しの手順。更新を戻せるか。戻せない変更は、それ自体がリスクです。
訓練。実際に障害を起こしてみる演習を行う組織もあります。手順が機能するかを確認するためです。
記録の場所。障害中に情報を集約する場所を、あらかじめ決めておきます。
これらがないと、実際に起きたときに混乱します。手順がある組織とない組織では、復旧時間が大きく変わります。
使われる仕組み
監視に使われる技術を、役割ごとに整理します。
指標の収集と可視化。数値を集め、グラフで見られるようにするもの。PrometheusとGrafanaの組み合わせが広く使われます。
ログの集約。複数のサーバーに散らばるログを、1か所で検索できるようにします。
分散トレース。複数のサービスにまたがる処理の流れを追跡します。構成が複雑な場合に有効です。
クラウド事業者の標準機能もあり、まずこれで足りる場合も多くあります。
道具を増やす前に、何を測るかを決めるべきです。目的が曖昧なまま導入すると、設定だけが増えます。
どこまで安定させるか
監視の設計には、目標値の設定が伴います。
稼働率100%は目標になりません。費用が無限に増え、変更もできなくなります。
現実的な目標は、事業への影響から決めます。月に数十分止まっても業務に支障がないシステムと、1分の停止が損失になるシステムでは、かけるべき費用が違います。
稼働率の水準は、費用と直結します。桁が1つ上がるごとに、必要な構成と体制が大きく変わります。
すべてを同じ水準にする必要はありません。重要なものだけ高い水準にし、他は緩やかにする。この判断が設計の出発点になります。
記録の設計
監視と並んで重要なのが、記録の残し方です。
何を残すか。誰が、いつ、何をしたか。処理の開始と終了。誤りが起きた場合の詳細。
残してはいけないもの。パスワード、個人情報、決済情報。記録に含めてしまう事故が実際に起きています。
形式を揃える。後から検索・集計できる形にします。自由な文章では、機械的に扱えません。
保管期間を決める。法令上の要件がある場合もあります。無制限に貯めると費用がかかります。
記録は、障害時に唯一の手がかりになります。足りないことに気づくのは、たいてい必要になった後です。
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