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投資銀行からITスタートアップへ。通用するスキルと、通用しないもの

イーランサー・ジャパン株式会社
この記事の要点

投資銀行からスタートアップへ移るとき、そのまま使えるのは事業計画を数字に落とす力、資金調達の実務、企業価値評価です。一方で前職の看板、分業の前提、完成度の基準は持ち込めず、8割の精度で早く出すほうが正しい場面に合わせられるかが分かれ目になります。現金報酬は下がり、ストックオプションの価値は出口が実現して初めて確定するため、行使価格、権利が確定する期間、退職時の扱い、優先分配の条件を入社前に確認すべきとされます。

用語の説明
  • ストックオプション/決められた値段で自社の株を買える権利を、報酬の一部として受け取る仕組みです。
  • 行使価格/将来その株を買えることにしておく、あらかじめ決められた1株あたりの値段です。
  • 優先分配/会社が売れたときに、投資した側が先に受け取れるよう決めておく取り決めです。
  • 出口/会社の売却や株式の上場など、持っている株を現金に換えられる機会のことです。

投資銀行からスタートアップへ移る人は増えています。財務の専門性は明確な武器ですが、そのまま持ち込めるとは限りません。この記事では、何が通用して何が通用しないのか、どのポジションが受け皿になるのか、報酬をどう考えるべきかを整理します。

そのまま通用するもの

投資銀行で身につく能力のうち、スタートアップで即座に価値になるものがあります。

とくに資金調達の経験は希少です。創業者が独学で対応していることが多く、経験者が入るだけで条件が変わることがあります。

通用しないもの

一方、持ち込めないものもあります。ここを認識しているかどうかで、着任後の3か月が変わります。

第一に、看板です。投資銀行の名前で開いていた扉は開きません。第二に、分業の前提です。資料作成も、データ収集も、実行も自分でやります。第三に、完成度の基準です。スタートアップでは、8割の精度で早く出すほうが正しい場面が多くあります。

最も摩擦が起きやすいのは3つ目です。精度を落とすことを品質の妥協と捉えると、意思決定の速度で組織と衝突します。

受け皿になるポジション

実際に移る先は、いくつかの型に分かれます。

注意したいのは、フェーズによって求められるものが違うことです。シード期のCFOは経理も採用も総務も担いますが、シリーズC以降では専門性が問われます。自分の経験がどのフェーズに合うかを見極めないと、期待とずれます。

報酬をどう考えるか

現金報酬は、多くの場合下がります。ここをストックオプションで埋める設計になりますが、その価値は出口が実現して初めて確定します。

スタートアップの出口については、EXITの多くがM&Aであるという指摘があり、IPOだけを前提に考えるのは現実的ではありません。買収額によっては、優先株の分配条件により普通株の取り分がほとんど残らない場合もあります。

行使価格、権利確定の期間、退職時の扱い、優先分配の条件。この4点を入社前に確認しておくべきです。投資銀行出身であれば、条件を読む能力は本来あるはずの領域です。

うまくいかない典型

転身が失敗する理由は、能力不足よりも期待のずれであることが多いとされます。

よくあるのは、「分析して提言する役割」として入ってしまうケースです。スタートアップが求めているのは、多くの場合、提言ではなく実行です。誰もやっていない仕事を拾う姿勢がないと、居場所ができません。

もうひとつは、意思決定の速度への不満です。情報が揃わないまま決める場面が続きます。これを「雑だ」と感じるか「そういうものだ」と受け入れられるかは、適性の問題です。

着任してからの90日

移った直後の進め方が、その後の立ち位置を決めます。

最初にやるべきは、数字の整理です。多くのスタートアップでは、資金繰り、原価、顧客ごとの採算が整っていません。ここを可視化するだけで、経営の議論の質が変わります。短期間で成果が見え、信頼を得やすい領域でもあります。

同時に、実務を自分で回す姿勢を見せることが重要です。分析だけでなく、請求書の処理も、採用の面談も引き受ける。この期間に「一緒にやる人」と見なされるかどうかが、その後の発言力を決めます。

金融出身者が特に貢献できる領域

スタートアップで不足しがちで、かつ金融出身者が埋められる領域があります。

創業者が最も孤独になりやすいのは資金の判断です。ここを一緒に考えられる人材は歓迎されます。

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