キャリア

金融業界のエンジニアの仕事とは。システムの種類と、求められる技術

イーランサー・ジャパン株式会社

金融業界のエンジニアは、他の業界と何が違うのか。技術そのものより、止められないという制約と、規制の存在が働き方を規定します。この記事では、扱うシステムの分類、実際に起きている障害の傾向、求められる技術と姿勢を、公的な資料をもとに整理します。

扱うシステムは3つに分かれる

金融機関のシステムは、大きく3つの層に分けて理解すると整理しやすくなります。

どの層を担当するかで、仕事の性質は大きく変わります。勘定系は保守と移行が中心で、慎重さが評価されます。情報系は新規開発の比率が高く、技術の幅が求められます。求人票を見るときは、まずどの層の話かを確認する必要があります。

他業界と何が違うのか

最大の違いは、「止められない」という制約が制度として存在することです。

金融庁は監督指針等に基づき、金融機関からシステム障害の報告を受領しています。障害が起きれば当局への報告義務が生じ、復旧状況、原因、再発防止策の確認を受けます。不具合が技術的な問題にとどまらず、監督上の論点になるという点が、他業界との決定的な差です。

この構造は、開発の進め方に直結します。テストの工程が長く、本番作業には複数人の確認が入り、変更の記録が厳密に残されます。速度より確実性が優先される理由は、文化ではなく制度です。

実際に何が起きているか

金融庁が毎年公表している「金融機関のシステム障害に関する分析レポート」によれば、2023年度に金融機関から報告されたシステム障害は約1,900件とされます。対象は預金取扱等金融機関、保険会社等、金融商品取引業者、貸金業者などを含みます。

同レポートでは、障害を4つの端緒に分けて分析しています。

とくにシステム統合・更改は、影響が大きく専門性も高いため難度が高いと指摘されています。委託先を含めた管理態勢、仕様書などの開発文書の整備、有識者によるレビュー体制の確保が課題として挙げられています。

また、外部委託先が管理する機器の脆弱性を突かれた不正アクセスや、DDoS攻撃によってインターネットバンキングが利用できなくなった事案も報告されています。自社の内側だけを守れば足りる領域ではないことが分かります。

求められる技術と姿勢

技術要件は担当する層で異なりますが、共通して問われるものがあります。

レガシーな環境が残る領域も多く、新しい技術だけを扱いたい人には向かない場面があります。一方で、既存システムの仕様を読み解き、影響範囲を見極める能力は、他業界でも評価される汎用的な力です。

この業界を選ぶかどうかの判断軸

向き不向きは、次の3点で整理できます。

第一に、慎重さを評価される環境が合うか。早く出すことより、壊さないことが価値になります。第二に、手続きの多さに耐えられるか。承認、レビュー、記録は省略できません。第三に、社会基盤に関わる責任を引き受けられるか。

報酬水準や安定性で語られることの多い領域ですが、実際に日々効いてくるのはこの3点との相性です。求人票の技術スタックより、どの層のシステムを、どういう体制で扱うのかを確認するほうが、入ってからのずれが小さくなります。

この業界でのキャリアの積み方

金融のシステムに関わる人のキャリアには、いくつかの型があります。

3つ目の転用可能性は、この業界の隠れた利点です。止められないシステムを扱った経験は、医療、公共、物流など、同じ性質を持つ領域で高く評価されます。

入る前に身につけておくとよいこと

金融特有の知識は入ってから覚えられますが、先にあると立ち上がりが早い領域があります。

技術面では、データベースのトランザクション、ネットワークの基礎、テスト設計。いずれも金融に限らず基礎として効きます。

業務面では、決済の流れ、勘定の仕組み、金融商品の基本。専門書だけでなく、金融庁や日本銀行が公開している資料が入門として使えます。

姿勢の面では、記録を残す習慣です。誰が、いつ、何を、なぜ変えたか。この業界では技術力と同じくらい評価される部分であり、他業界でも通用する習慣になります。

参考文献
  1. 金融庁「金融機関のシステム障害に関する分析レポート」(2024年6月)
  2. 金融庁「金融機関のシステム障害に関する分析レポートの公表について」

本文中の数値は各調査時点のものです。調査主体により定義や推計方法が異なるため、出典を確認のうえご参照ください。

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